このコラムVol.344「有事の際の賃料減額」https://scandpartners.jp/blog/post-5280で国交大臣のコメントに感じた疑問を書いたが、ようやく、国土交通省も家賃の支払い猶予や免除に応じたビル所有者に対する税金や社会保険料の納付猶予やビル所有者の負担軽減を行うテナントへの支援策をまとめた。
出された施策は、
・収入が急減した企業を対象に国税、地方税、社会保険料の納付を1年間猶予
・ビル所有者がテナントの賃料支払いを猶予・減免したことで収入が減少した場合も特例の対象
・固定資産税や都市計画税の減免措置もテナントの賃料支払いの猶予・減免で収入が急減した場合は対象
・ビル賃貸事業者がテナントに対して賃料を減額した際の損金算入
・既に減額された賃料についても遡って損金算入
と、おおむねこのコラムで書いたものと同様のものとなってホッとした。
今回は、疫病という災害だ。
ビルオーナーやSCやテナントの責任でもないし、瑕疵があるわけではない。
だから、誰かが一方的に損害や譲歩を被るものでもなく、それぞれが出来る範囲で努力し合い、どうしようもないところを皆で負担し合うことが、もっともリーズナブルな考え方だと思う。
「SCは普段儲けてるんだから賃料をこの期間タダにしろ」
「国難なんだから国が負担するのは当然だ」
「ビルオーナーだって同じように損害が出てるし、税金や保全には固定費がかかってるんだ」
とお互いに言い合っていては交渉にならない。
テナントの中には、政府が出した保証金や補助金を活用しようとしっかり勉強している人もいるし、休業しても何とか次の手を考えて収益につなげようと行動している人はたくさんいる。
何もせずに文句だけ言ってても何も生まれない。
でも、平時の収益に届かないことも理解できる。
ビルオーナーだって、テナントに配慮せず、かたくなに賃料を徴収して、テナントが倒産にでもなればコロナが収束した時は空室の状態になる。
その時、すぐ後継店舗が見つかる社会情勢では無いだろうから、今、空室を生むのは得策では無い。
政府だって、小売りや飲食などの店舗が倒産してシャッターだらけになった街では、せっかくコロナを収束させても経済の復活は当分見通せなくなる。
流通業の川下が疲弊していれば、川上の生産まで影響するのは当然だ。
今は、どれくらいの損害になるのか、そして、それを自分の努力でどこまでカバーできるのか、カバーできないのか。
それを見極め、お互いが譲れる場所を見つけるしかない。
1つだけ言えるのは、平時と比べた収益の低下は甘受しなければならないこと。
これは皆が理解しないと決着点は見つからない。