SCアンドパートナーズ

Vol.289 「モールの顧客動線を考える」

ショッピングモールの顧客動線のパターンは大きく2つあるのをご存知だろうか。

それは、「2核1モール」「サーキットモール」

まず、一つ目の「2核1モール」は、一番オーソドックスなパターン。

日本ではイオンモール伊丹やスマーク伊勢崎がその代表例。

上はイオンモール伊丹のフロアプラン。

開業時はダイアモンドシティだったものが途中でイオンモールとなり現在に至っている。

ここはイオン自らが核テナントの役割を担い、モールを形成している。

スマーク伊勢崎は、2核1モールの形態を取りつつ、サブ動線を配置した少し変形パターンを取っている。

スマーク伊勢崎のモール空間

見通しをわざと抑制した湾曲(カーブ)通路によって顧客の歩行距離を伸ばす動線が上手に作られている。

ただ、見ると分かるが、ここには百貨店もGMSも無い。

実はこの時代あたりから徐々に百貨店とGMSを核テナントとして形成する2核1モールの性格が少しずつ変化している。(詳しくは後ほど)

この2つのSCに代表される「2核1モール」は、この他にも全国にたくさんあるが、このパターンは、両端に集客力(顧客吸引力)のある大型店舗を配置し、その間をモール(顧客動線)でつなぐもの。

両側に核テナントがあることで、顧客が端から端まで歩き、顧客の買い回りも促進され、かつ、賃貸区画の評価が均質になるため単位当たり賃貸料が標準化されることになる。

だから、顧客のためでもあり、SC事業者のためでもあり、出店するテナントのためでもあり、効率的な配置計画と言える。

アメリカでは、大規模な核店舗を両端だけでなく、中間にも多数配置することで一層顧客の買い回り促進を狙った超大型モールも多い。

下記はラスベガスにあるファッションショーモールだが、複数のデパートがモールを取り囲んでいる。

これだけデパートがあって競合が起こらないのか、と不思議な気もするが、品揃え、サービスなど、それぞれに特徴があり、別個な顧客をターゲットにしているため共存が可能である。

 ファッションショーモールのセンターモール

多様なアメリカならではと言える。

実は、この2核1モールには最大の欠点がある。

それは核テナントの力(集客力、誘客力)の低下。

両端の核テナントの力が低下してしまうと顧客の歩行距離も滞在時間も短くなってしまう。

この2核1モールの欠点を補うものとして、もう一つのパターン「サーキットモール」が存在する。

下記は、阪急西宮ガーデンズとららぽーとTOKYO-BAYのフロアマップ。

阪急西宮ガーデンズは計画的に百貨店とGMSを配置し、完全なレースサーキットをデザインしている。

阪急西宮ガーデンズのモール空間

この阪急西宮ガーデンズについては本コラムで詳細にレポートしているので下記を参照にしてほしい。

https://scandpartners.jp/blog/post-2272

右はららぽーとTOKYO-BAYのフロアプランだが、HPからのコピペなので画像が悪く分かりにくいが、モール全体を顧客動線がぐるっと回るようサーキット動線が配置されていることがわかるだろうか。

ここ、ららぽーとTOKYO-BAYは、阪急西宮ガーデンズとは違い、スタート時(開業時)は百貨店とGMSが両端にある2核1モールの形態だった。

ところが、両端にあった百貨店とGMS両店とも相次ぎ撤退したことで順次リニューアルと増床を続け、現在はしっかりしたサーキットモールの形状とし顧客利便性を大きく向上させている。

ピンチをチャンスに変えた好例だろう。

このサーキットモールは、顧客はレースサーキット動線をぐるっと回遊することで効率よく館内を回遊することが出来る。

同じところを通らずとも1周すればすべてが回れる特性を持つ。

時折、このサーキットをショートカットする動線を作ることもある。

下記は、オンタリオミルズだが、あまりに広大すぎて、今、自分がいる場所を見失いそうだが、サーキットになっているので、とりあえず歩いていれば元には戻ることが出来ることもメリットである。

さて、ここからが本題となるが、最近、日本におけるモールの設計に変化が出てきていると感じている。

これは、前段でも触れたが、百貨店やGMSの撤退にあるように、この2つの大型店の勢いが低下し、核テナントとしての役割を負いにくくなっていることや、そもそも百貨店やGMSが新しく出店することに慎重になっていることからこれまでのような「2核1モール」パターンは作りにくくなっている。

そこで登場したのが、これまで準核テナントだった店舗を複数配置し、それをサーキットモールでつなぎ、その間を店舗を並べていくパータンである。

上はららぽーと平塚湘南とららぽーと沼津のフロアプラン。

この2つには百貨店もGMSも無い。

その代わり、大型店舗を周囲に配置し、それを回遊動線(サーキットモール)で周遊する造りとなっている。

今月開業したららぽーと沼津はこの周遊動線をセンターのアトリウムを中心に「8の字」で回遊している。

ららぽーと沼津のモール空間

ユニークである。

やはり、昔のような強力な大型店舗が無くなった今、こういった準核テナントやフードコート(やフードホール)を上手に配置し、それらをマグネットとして回遊させる方式が今は主流になっている。

そして、ユニークなのが先週開業した「テラスモール松戸」である。

上のMAPの下段に掲載するテラスモール松戸は、複数の核テナントを周遊道路で回遊させる、いわば「多核型サーキットモール」と呼べる動線計画である。

テラスモール松戸の「多角型サーキットモール」は、周囲に核テナントを配置し、それを湾曲したモールでつなぎつつ、レストランゾーンをサブ動線で付加し、センター(中心)にアトリウムを配置し、結合させる設計である。

テラスモール松戸のセンターのアトリウム

実は、この「多核型サーキットモール」の動線計画ついては、昨年、開業した「イオンモール座間」で感じていた。

上のMAPの上段がイオンモール座間だが、核テナントはイオン自らが役割としながら大型店を配置し、それをサーキット型のモールで回遊するよう設計されていた。

これを見た時は、2核1モールの変形パターンというか、2核1モールとサーキットモールの融合と捉えていた。

しかし、今回の松戸を見ると、これまでの2核1モールが終焉を迎え、この「多核型サーキットモール」が主流になったと確信した。

過去、百貨店とGMSに勢いがあった当時に開発された2核1モールは全国にたくさんあるが、このパターンのモールは今後、この考え方に切り替えていかないといけないだろう。

どこかのタイミングで大きくリニューアルする(動線を作り替える)時が来ると思う。

でも、この2核1モールやサーキットモールといった顧客回遊性すらも実現していないモール(SC)も実は全国には多い。

・主動線が無い、・動線とエスカレーターが交錯している、・縦動線が弱い、・エスカレーターの位置が偏っている、・見通しが悪い、・行き止まりの動線がある、などなど多くの課題を抱えた商業施設は無数に存在する。

来店されたお客様が、疲れず、楽しく、長く快適に滞在し、長い距離を歩いて、多くのお店に寄って、満足して帰ってもらう。

この循環が無くなれば、リアルの売場はおしまいである。

ECに取って代わられたくなければ、これらのモールパターンを真剣に研究し、お客様の快適性を追求するよう各デベロッパーは努力すべきだろう。

そんなことを松戸を見ながら感じて帰ってきました。

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株式会社 SC&パートナーズ

代表取締役西山貴仁

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。

Facebook:西山貴仁 -SC & パートナーズ-