「日本で一番いいと思うSCはどこですか」
「見ておくべきSCはどこですか」
時折、この2つの質問を受ける。
もちろん、1969年に日本のSC時代を作り出した玉川高島屋SCは当然。
でも、もう一つ、いつ行っても色あせないSCがある。
それが「阪急西宮ガーデンズ」だ。
東の玉川高島屋SC、西の阪急西宮ガーデンズ、と言われるくらい完成度が高い。
1.サーキットモール。百貨店とGMSを核に完全なサーキットモール。お客様は知らず知らずに一周してしまう。どうしても奇をてらった設計をしてしまう商業施設開発にあって、セオリーをきちんと守る動線計画。
2.駐車場の位置。中心部への駐車場配置。建設コストを考えると駐車場棟は別棟で作られることが多い商業施設。そうすると外観は駐車場ビルとなる。でも、ここはセンターエリアに配置することで外周から駐車場棟が見えにくく周辺環境に配慮。もちろん。停めたお客様も売り場に行きやすい。
3.モールの曲線。歩いていくとその先が徐々に見えていく動線計画。直線で単調にならないような配慮が見事。
4.空間環境の切り替え。歩いていくと床の素材、壁の色、トップライトなどによってゾーンでの個性を断続的に切り替えていく。テナントの顔ぶれ、デザインと相まって印象がまったく違う。
5.照度。実はこれが一番驚くところ。モールは明るくすることを求める。でも、ここはあえての薄暗さ。暗いことで落ち着きと質感を醸し出す。とにかく薄暗い。
6.吹き抜けの使い方。要所要所にアトリウムを配置し、それをつなげるバーチカルの吹き抜け。これによって圧迫感を減らし、店舗の視認性を上げる。
7.2核。過去、2核1モールと呼ばれ百貨店とGMSを核として配置したSCは全国に存在した。残念ながら百貨店やGMSと言った小売り業態が不調になったことによって、この2核1モールは減少した。その中でここだけは2核が健在。多様な顧客に対応できる。
8.変化する床素材。モールを歩いていくとゾーンによって床の素材とパターンが断続する。このことで歩く楽しさや変化を知らず知らずのうちに感じることが出来る。管理コストを考えれば統一する方が良いに決まっているがあえてのコントラスト。
9.テナントミックス。マーケットの良さも手伝って購買単価も一定を保ち、出店希望のテナントも多いと聞く。そして新しいものへもチャレンジする。
10.運営力。店舗のファサードデザインコントロール、クリンネスなモール環境、おもてなしの心。そういった企業としての姿勢が運営管理に表れている。
ここは開業が2008年、ちょうどリーマンショック。
そして、着工が2006年、ちょうどファンドバブル。
この着工と開業のタイミングが少し遅かったらこの開発はどうなっていただろう。
この開発を見て驚いたのは球場跡地をすべて商業用途で活用したこと。
不動産業的な考えれば、住宅、病院、学校など多用途でポートフォリオを考えがち。
場合によってはマンション分譲で早期回収を目論む。
それを商業施設だけで開発した度胸と決断は相当なもの。
今だったらこの決断は難しいかもしれない。
今、駅からのアプローチ動線の開発も進む。
この先、西の雄として存在感を保って欲しいと思う。