平日の日中からこれだけの混雑を見せるお店は少ない。
若い女性、それも多国籍。
そう、ここは新大久保。
コスメにフードに雑貨に。
私にはこの中でどの商品がいいのか全く分からない。
彼女たちは何を基準に選んでいるのか。
でも、中に入れば化粧品と食料品がゾーンを分けているとは言え、同居する。
一般的に売り場を作る時、化粧品と食料品を混在させたりしない。
でも、そんなことは、お構いなしだ。
街は人でごった返す。
今、ギクシャクしている日韓関係。
でも、ここはそれもお構いなし。
恐らく、今のインフラ(道路、鉄道、駅)では、これ以上の来街者の受け入れは無理なんじゃないかと思う。
相変わらず、タピオカとチーズドッグは大盛況だ。
一時はやや陰りを見せた新大久保の勢いはまた盛り返した感じだが、今日、ここで主張したいのは、「自然発生的」の魅力と強さだ。
昔はコントロールされていない商店街より、1つのマネジメントする機関の存在するショッピングセンターが優れていると言われた。
でも、ここ新大久保を始め、裏難波、天満、野毛、代官山、大名など日本中に面白い街が存在する。
これらの街に共通することは一つ「自然発生」だ。
誰も統一的なコントロールなどしていない。
このNOコントロールが面白さを作る。
我々は、ショッピングセンターを学ぶとき、まず、次の三原則を覚えさせられる。
【ショッピングセンターの三原則】
1.計画性
2.総合性
3.運営管理の統一性
これは、デベロッパーという機関が、MD・テナントミックスなど計画性を持って開発し、総合的な品揃えによって顧客に「ワンストップショッピング」という価値を提供し、休業日や営業時間を統一することで利便性や分かりやすさを作り出す。
これが自然発生的な商店街とは異なるショッピングセンターの優れた価値だ、と。
確かに、Tシャツを買おうとショッピングセンターに行けば、多くのTシャツが短時間に見ることが出来る。
これが商店街だとそうはいかないだろう。
そして、行ったはいいけど休業日、なんてこともショッピングセンターの場合はほとんどない。
でも、これらの価値は、今やネット(EC)の方が上回る。
ECは24時間営業、歩かずともスマホ一つで多数の商品を選ぶことが出来、店員のセールストークではなく、実際に使用したユーザーの評価を見る。
クリック一つで次の日には届く。
ショッピングセンターの提供価値のほとんどを代替している。
そして飲食施設。
食事や酒席。
我々は、商業ビルの飲食フロアでは無く路面店を選択することが多い。
これは理屈ではなく、そこで培われた人々の息吹、営み、歴史、そんなことを感じるからなんだと思う。
何が言いたいのかと言うと、以前、
Vol.90 高知でリアル価値のヒントをもらう
でも指摘したが、リアル価値は作られたものではなく、自然発生の中にあるのではないだろうか、と。
今、ショッピングセンターや商業施設では、多くの「~ねばならない」に拘泥されることで魅力が低下している。
そんな課題意識を持っている。
・営業時間は統一しなければならない。
・セールは統一しなければならない。
・ゾーニングは守らなければならない。
これらは顧客のために守らなければいけないことはたくさんある。
でも、何か、作られた基準に縛られ、本当のリアル価値を見失い、人々の支持をショッピングセンターは失いつつあるのではないか、と。
百貨店にも、1階はコスメでなければならない、ラグジュアリーが無ければならない、性別・年齢ごとにフロアを作らなければならない、などの画一化された既成概念は無いだろうか。
外国のショッピングセンターを回ると日本のショッピングセンターの運営管理の統一性の精度の高さを感じる。
これは丁寧できめ細かい日本人特有のもの。
でも、それが行き過ぎていないか。
以前は、「新業態」に「初出店」で人は集まった。
今はそれも長続きはしない。
リアル価値はどこにあるのか。
真剣に考える時期に来ていると思う、そんな新大久保。