以前、このコラムで視察の視点は、「簡単に変えられないもの」にあると解説した。
商業施設などは一度作ったらそう簡単に変える(改変)することが出来ないものが多い。
エレベーターやエスカレーターの場所を変えるのは数千万、時には数億の投資がかかる。
だから、新設の商業施設を見るときはここを重要視する。
でも、商業施設に従事する人は、MDやテナントミックスを重視する人も多い。
どんなテナントミックスなのか、それが新業態なのか、取り扱い商品は何なのか。
もちろん、これも大切であることは間違いない。
でも、商業施設を造る人や運営する人にとって大切なのは、お客様の車がスムーズに入庫し、快適にお買い物をし、ストレスの無い時間を過ごし、出店したテナント区画の前を満遍なく歩いてもらうことがまずは第一。
嫌な思いや不快な思いや疲れてしまえば、再来店してもらえないもの。
ところが、歩かせるためなのかエスカレーターをフロアごとに離したり、無用な吹き抜けを作ったり、顧客動線を錯綜させたり、行き止まりの通路だったり、こういった施設が意外に多い。
サイン計画もピクトサインに拘るがあまり、分かりにくく開業してから「トイレ→」とパソコンで打ち出したコピー用紙を柱に貼る。
この春、コロナ禍で開業できなかった施設が最近一気に開業を迎えている。
商業施設を造る人、運営する人は、好きなMDを見ることもいいでしょう。
でも、それと並行して、向こう10年、20年、顧客から愛される施設になるのかどうか。
しっかりと見て自らの仕事に活かしてほしいと思います。