ECの伸長に対してショッピングセンター(SC)はどう対峙するのか。
その1つとして、SC事業者がECへ参入する、もしくは、SCがECを併設する企業も多い。
そのため、セミナーのたびに必ずと言っていいほど次の質問を頂戴する。
それは、
「SCがECに取り組むことについてどう思われますか? 西山さんの見解は?」
この質問には、いつも次の3つを答えることにしている。
それは、
1.Amazon、楽天、ZOZOを超える自信や気概はありますか?
2.そのECサイトでは、どこにも無い強いコンテンツやサービスを提供出来ますか?
3.ECは、SCの補完ですか?それともECを独立したビジネスとして考えますか?
この3つだ。
ECはSC事業とは異なるビジネス。
だから、参入するからには先行優位を持つ企業を凌駕しない限り、利益が出るはずも無い。
利益が出ないどころか利用者すら伸びないだろう。
「Amazonを抜くなんて無理だよ」と言うのであれば止めた方がいいだろう。
次に強いコンテンツとサービス
消費者はUNIQLOの服が欲しければUNIQLOのサイトに行くし、アダストリアの商品が欲しければアダストリアのサイトに行く。
特にメーカーに拘らなければAmazonや楽天に行く。
それを乗り越えて、SCが作ったECへアクセスする魅力はどこにあるのか。
貯まったポイントがSCとECで互換出来る程度では魅力には乏しい。
SCと連動して、SCに出店している100店舗程度の出店では3億点以上の取り扱い品目数のAmazonに勝つのは難しいだろう。
消費者が、メーカーのサイトやAmazonのサイトに行かずに自社サイトにアクセスする必要性(必然性)は何か。
Amazonは会員になれば、fireTVが見放題というサービスが付く。
楽天は、ECだけでなく、トラベル、証券、pay、スマホなど各種サービスを次々に展開する。
これらに勝る強いコンテンツを作れるのか。
ECでは無いが、ネットフリックスは独自の番組(コンテンツ)を徹底的に充実させて加入者を伸ばしている。
これも独自のコンテンツに他ならない。
消費者が自社ECにアクセスしなければならない理由が作れるか否か。
ここが重要だ。
最後に、ECはSCの補完か否か、だ。
SC企業の偉い人が現場の担当者に、「世の中、EC、ECと言っているのに、わが社は何も対応しないのか!」と指示を出す。
言われた担当者は、「はい、分かりました! すぐに対応します!」と専業のベンダーさんに頼んでECサイトを制作する。
でも、メーカーとの協議、商品選定、撮影、出品、在庫管理(連動)、物流、アフターなどを整備しようと思ったら相当大変なことになる。
この時間とコストをかけて利益を出すことは並大抵のことではない。
但し、この活動が、「当社は積極的にECに取り組んでいます!」と投資家向けのIRネタと考えるのであればそれはそれでアリだろう。
IR説明会で胸を張って答弁が出来る。
しかし、これもSC事業の補完であり、EC単体での採算性は難しい。
ECとして成功するためには、
①先行業者を追い抜くか
②独自のコンテンツやサービスを持つか
③競合に負けない選ばれる強みは何か
④効率的な在庫(管理)、物流、アフターなどの仕組み(システム)を構築できるか
この4つだ。
もし、そうではなくて、あくまでSC事業の補完であり、利益は出ずともIRネタとして行うことも企業活動上、大切なことではある。
(事業としてうまく行かなくても)「当社は海外にも進出しグローバルに展開していきます!」と海外への展開を図り、企業の社会的ブランドイメージを上げる活動と似ている。
ECは、独自、固有のビジネスであり、SC事業の延長線上には無い。(ここが重要)
でも、何事もやってみないことには結果は出ないもの。
やりながら、走りながら、これまでの延長線上では無い、Amazonなどが思いつかないようなことを探求していくチャレンジ精神を持つことも大切。
トライ&エラー。
「SCがECをやることについてどう思いますか?」
この問いに皆さんならどう答えますか。