SCアンドパートナーズ

Vol.389 「三井アウトレットパーク横浜ベイサイドがOPEN」

2018年9月、建て替えのために閉店した三井アウトレットパーク横浜ベイサイドがようやく開業した。

建て替え後の開業は、2020年4月10日の予定だったものが、コロナ禍によって6月4日に。

2か月の遅れ。待ちに待った開業。

前身の三井アウトレットパーク横浜ベイサイドマリーナが出来たのは1998年。

当時は、アウトレットモール(当時はアウトレットセンターと呼んでいたかな)の草創期。

黎明期と言うべき時期に突然現れた横浜ベイサイドマリーナは空前のヒット商品になった。

駐車場はパンクし、遠くの駐車場からシャトルバスでピストン輸送。

すさまじいほどの混雑だったことを今でも記憶している。

今、あそこまで開業景気を引き起こす商業施設はそうそう見られなくなった。

それほどまでに多くのお客様が押し寄せた。

その後、2000年にグランベリーモール、御殿場プレミアムアウトレット、ラ・フェット多摩(現三井アウトレットパーク南大沢)とたて続けに開業し、東京の南西部はアウトレットモールブームで沸き返った。

その中にあって横浜ベイサイドマリーナは、パイオニア的な存在として、パステルを基調としたかわいい建物で特異なポジションを築き、長らく皆に愛され続け、そして、建て替えに。

中庭も植栽が増えました。

今回の建て替えリ・スタートを表現すると「パワーアップ」という言葉がふさわしい。

1998年のスタート時、全く想像も出来なかったブランドたち。


ここではすべては掲載出来ないが、今、アウトレットストアを展開するブランドはほぼ揃っていると思う。

今回はフードコートとフードホールも完備。

700席あると言う。

でも、今は時節柄、ソーシャルディスタンスを取るために間隔を開けているので、もう少し、収容人数は減るようだ。

最近、フードコートでは定番になった「小上がり」スペース。

小さいお子さんを連れた方には重宝する場所。

でも、ここもソーシャルディスタンスでテーブルを1つずつ開けての利用となっている。

このソーシャルディスタンス、今後も続くと思うと商業施設の運営には負荷が大きい。

充実のフードコートだ。

そして、フードホールも。

レストランだけでなく、食が充実した。

そしてフードコートの建物には、食料品も。

前身の横浜ベイサイドマリーナの時は、別棟にスーパーマーケットとリカーショップを大きく取ったのが懐かしく感じます。

そして、今開業する商業施設には必ずと言っていいほど登場するリンツ。

やっぱり美味しいですよね。

今回の見どころは、ちょっとマニアックですが、3層(3階建て)をうまく活用した構造だと思います。

それは、「サーキットモール と インモール と オープンモール」

詳しく解説しますね。

まず、1階。

(ホームページから転載させていただきました)
https://mitsui-shopping-park.com/mop/yokohama/search/floor3f.html

完全なインモール。

インモールと言うのは、天井がある室内空間です。

だから空調が効き、雨が降ってきても快適に買い物が出来る。

と説明してもよく分からないと思うので写真を。


RSCなどによく見られる空間ですね。

そして、2階。

1階のインモールとは変わり、アウトモール(オープンモール)に変化します。

1階の上に乗っている感じかな。

まるで地上の路面店を歩いているかのような造り。

でも2階。

ひさしがあるから多少の雨も平気だし、何よりもアウトドアがいい。

そして、3階。

2階の上を3階の回廊が周る。

この雰囲気は、これまでのアウトレットパークでもお馴染みの造りだ。

今回の構造は、サーキットモール動線を基本とした3棟建て。

そして、3層をうまく利用したインモールとアウトモールのハイブリッド型。

よく考えられているな、と感心します。

工事費が高騰の折、苦労も多かった思います。

でも、それを癒すかのような自然がここにはあります。


海の雄大さは何にも勝る。

通常、商業施設の場合、海沿いの立地は「商圏が半分」になるということで不利になることが多い。

「商圏の半分が海」となれば、当然、そこには人が住んでいないから、商業立地としては難しい。

でも、このコラムVol.383御殿場プレミアムアウトレットの回で触れたようにアウトレットモールの成功要因の一つ、リゾート地と非日常性。

海の存在が、見事に体現しています。

ところで、御殿場プレミアムアウトレットのレポートの時、触れたショップフロントのガラスの処理方法。

今回の三井アウトレットパーク横浜ベイサイドマリーナのショップフロントのガラスは床まで。

御殿場プレミアムアウトレットの場合は、腰壁がありました。


この写真は御殿場プレミアムアウトレットのショップフロント↑

どうですか?

ショップフロントのガラスを床までにした場合と腰壁を立てた場合の雰囲気の違い。

これは人によって好き好きがあるし、もちろん、工事費や構造上の問題やメンテナンスの方法も違うので一概に比べられません。

ここで私が言いたいのは、どちらがいいか、ではありません。

商業施設は、こういった細かい造りが、人の感じる空間環境や雰囲気を知らず知らずのうちに作るということです。

このショップフロントのガラスの造作は、その代表的な対比例ですね。

こうって、庇(ひさし)、軒(のき)の下の床を切り替えるだけで雰囲気が変りますね。

さて、まだまだ、書きたいことは尽きないのですが、キリが無いのでこのあたりにしたいと思います。

最後に。

なぜ、私がいつもサーキットモールだとか、インモールだとか、アウトモールだとか、そういうことを気にするのか。

それは一度作ってしまうと「やり直しがきかない」からです。

もちろん、今回のように建て替えのような多額な投資をすれば修正も可能でしょう。

でも、そうでなければそう簡単に変えられない。

この「簡単には変えられないもの」が商業施設開発にとっては一番重要なことなのです。

(視察に行ったのにしっかり買い物をしてしまいました、アウトレットモールは遠くにあるので、わざわざ感が強くなって財布のひもが緩みがちですね。そう言えば、前身の時のコンセプトストーリー「ナンタケット島の物語」は引き継がれなかったのでしょうか。あの物語が好きでした)

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株式会社 SC&パートナーズ

代表取締役西山貴仁

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒。

Facebook:西山貴仁 -SC & パートナーズ-