賃借人(テナント)からの賃料減免要請には5つのパターンが存在するとこのコラムで指摘した。
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https://scandpartners.jp/blog/post-5443
その5つとは、
1.賃料請求権の有無
使用収益を制限された賃貸物に対してそもそも賃料を払う必要があるのか。賃料とは使用収益権の対価であり、使用できない状態では賃料を支払う義務は無いのではないかという主張
2.営業支援協力
賃借人(テナント)は、SC事業者の要請に従って休業したことで売上が減少、このままでは経営が成り立たないので賃料を減免してほしい、という切実な支援要請
3.SCビジネスの根源的特性
SCはもともと共存共栄の精神の下、統一された運営管理を基礎としたビジネスであり、賃料はそのビジネスにより生み出された収益を賃貸人と賃借人で応分にシェアするものであってこの状態では賃料を支払う大義は失われているというSCビジネスの事業特性の主張
4.弱者保護の社会的正義
SC事業者は大規模な不動産を所有し、相当の規模を持つ企業が多く、今回のような有事の際には弱者保護を優先し、CSRを追求、もって社会的正義を示すべき。
5.日頃からの不平不満による感情的主張
高い賃料を我々(テナント)から搾取し、賃貸借期間が満了すると簡単に契約を終了する定期借家契約を行っているのだからこういう時は我々に還元すべきだろうという日頃抱くSC事業者に対する不満
以上の5つに主張が収れんされるが、今日は、賃借人(テナント)に向けてメッセージを出したいと思う。
まず、5番目の感情論はまずは横に置いておいて欲しい。(感情論では話が進まなくなるので)
また、2番目の営業支援的要素は、数値化できるので双方分かりやすい。
しかし、賃借人(テナント)の中には財務情報(損益計算書)の提供を拒む企業もあるが、それではSC側の理解は得られないだろう。
◆さて、ここからが今日の本論だ。
3番目の「SCビジネスの根源的特性」
これを賃借人(テナント)は強く主張していいのではないかと思っている。
SCは、もともと共存共栄の精神の下、統一された運営管理を基礎としたビジネスであり、賃料はそのビジネスにより生み出された収益を賃貸人と賃借人で応分にシェアする、というコンセプトを持つ。歩合賃料制の導入だ。
実際、建物賃貸借契約書には、お互いの繁栄のために、店名の指定や取り扱い商品や売上金の扱いや統一的運営管理やリニューアルへの服従までも細かく記載されている。
賃借人(テナント)はこれを信じ、SC運営者(デベロッパー)に日頃から従い、研修に参加し、イベントにも協力し、その営業方針に則って営業を行っている。
今回は、その営業が出来なくなったのである。
SC側からは、この営業が不可能になったことは我々賃貸人(SC)に瑕疵は無い、と反論が出ると思うが、これまで営業を双方の協力の下で行ってきたにも関わらず、いきなり「不動産業的スタンス」で「契約書には記載はありません」と減免を突っぱねていいものだろうか。
SCは、賃借人(テナント)に対して、日頃から「デベロッパーとテナントはイコールパートナー」だとか、「デベロッパーとテナントは運命共同体だ」だとか、「大家と店子は親子同然」と言ってきたのだから運命を共にすることが当然である、と賃借人(テナント)には主張する権利があるのではないか。
この時、SC側から「日頃から我々に協力的ですか?」と言われてしまう賃借人(テナント)であればそれはかなわないだろうが。
今回、大切なのは、SC運営は遠い昔、「普通借家契約」という終了の無い賃貸借契約を前提に作られたモデルを現在も継続し、20年前に出来た「定期借家契約」という決められた期限に双方のポテンシャルを最大にするモデルに変えることなく、未だ、日本的・村社会的ウェットで曖昧な関係性で経営されていることを再考し、双方の責任分担、役割分担、リスク分担を明確にした上、有事の時のリスクの取り方を決めなければいけない時期に来ているということである。
さて、賃借人(テナント)の皆さん、上述の1.2.3.4.5、どの主張を行いますか。
そして、SCの皆さん、「デベロッパーとテナントはイコールパートナー」から「デベロッパーとテナントはビジネスパートナー」へ切り替える時期ではありませんか。