SCアンドパートナーズ

Vol.351 「当たり前は当たり前じゃない」

昨日、久しぶりにクリーニング屋に行った。

聞くと、在宅ワークによってクリーニングのニーズが減少し、売上が下降線だと言う。

通勤が無くなれば、ワイシャツやスーツのクリーニングは減り、売上が減少するのは、当たり前と思えば当たり前の話だ。

この「当たり前」、これが一番やっかいなものかもしれない。

今回の新型コロナウィルスは、この「当り前」をことごとく破壊している。

人類は、狩猟から農業を主として営み、いつしか家内制手工業、問屋制手工業、工場制手工業と進んでいった。

いわゆるマニュファクチュアだ。

その後、資本主義が進み、金融市場が整備され、ホワイトカラーの出現によって、現物を作らずとも付加価値を生み出し、社会資本を積み上げていく。

・集積の経済

・規模の経済

・範囲の経済

といった理論が生み出され、人は集積し、都市化の波は進んでいく。

そして、グローバル化によって、ヒトとモノとカネの動きが国境を越え、いつしかそれが当たり前の世の中になっていった。

ところが、この「都市化、グローバル化、移動の自由」をまるで狙ったかのように新型コロナウィルスはやってきた。

そして、感染しても発症しないという必殺技を備えて。

感染者が死んでしまえばウィルスにとっても死活問題。

感染者が発症せずに共存している限りは自分も生き続けられる。

よく考えたものだ。

今、世界中で人の移動を制限し、接触を避け、自宅にこもる。

これは、「都市化、グローバル化、移動の自由」を真っ向から否定する。

では、この騒ぎが沈静化したら、元の状態に戻るのか。

恐らく、すべて、100%同じ状態には戻らないだろう。

もちろん、元に戻らないと動かない仕事は多い。

しかし、在宅ワーク1つ取っても、通勤とそれに費やす時間、会社にいると繰り返される会議に根回し。

そういったことの非効率さも実感していると思う。

そしてホワイトカラーとて、会社に行かないと仕事が無い人も多い。

部下から報告を聞いて、それを会社の意思決定のルートに乗せていくような中間管理職がその代表例だ。

しかし、在宅ワークになると、個々人が付加価値を生み出す必要が求められる。

オフィスに集まることで作られた仕事は実は不要不急なものであったのだと分かってくるだろう。

これまで叫ばれてきた働き方改革がウイルスという見えない圧力によって急速に進む皮肉

・会社に属しオフィスに集まることで作られている業務。

・通勤に費やす時間と疲労とストレス。

・各個人が社会に対する付加価値を生み出す必要性。

この3つが今、眼前のものとなる。

でも、会社員が在宅ワークのままで新規事業が生まれたり、販路を拡大したり、意思決定を迅速なものに出来るか。

それも違うだろう。

今回、我々に大切なのは、これまで「当り前」と思ってきたことの中で実は「当り前」では無かったことを見つけ出すことではないだろうか。

この停滞する日々、無駄にしないために。

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株式会社 SC&パートナーズ

代表取締役西山貴仁

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒。

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