これまで「SCの賃料は固定賃料化が進む」と書いてきた。
ここで誤解してほしくないのは、私が「固定賃料化」を進めたいわけでは無いし、歩合賃料を否定しているわけでもない。
歩合賃料を採用することは大いに結構だし、売上連動性で収益を確保できればそれはそれで素晴らしいビジネスだと思う。
ただ、今後、「固定賃料化」が必然的に起こるのでは?と思っている。
その理由は、
アパレルを始め物販テナント比率が低下し、医療モールのようなそもそも売上の無いテナントが増加し、ECが進んでショールーミングが加速する中、いつまでも歩合賃料での収益をあてには出来ないのではないか?と。
でも、
「固定賃料化はテナントの売上にコミットしなくなるからSCをダメにする」
というご指摘もあると思う。
確かに過去、この議論があって歩合賃料を進めた背景もあった。
しかし、これは普通借家制度の仕組みの下で作られたものだ。
今は定期借家制度に変わっている。
定期借家契約は必ず契約のまき直し(再契約)がやってくる。
契約が満了になった時、契約を継続するのも終了するのも、賃料を据え置くのも、賃料を下げるのも、賃料を上げるのも、すべて賃貸人、賃借人、双方の合意に基づく。
その時、
賃借人(テナント)は引き続き契約したいのか。
賃貸人(SC)は引き続き契約したいのか。
この意思の有無と強弱とによって、再契約の是非も賃料の増減も決まる。
だから、この契約期間中、双方が、どれだけ努力したかどうか、これが次の契約に影響する。
これが定期借家制度に組み込まれた「契約主義」のプログラムなのです。
(これを『契約自由の原則』と言います)
もし、この指摘のように賃貸人が、固定賃料になったことでテナントの売上に無関心になり、契約期間中、何もしなかったら、次の契約の時、賃料を増額するどころかテナントは出ていってしまう。
だから、賃貸人(SC)は、契約期間中、テナントのサポートをしっかりやる必要がある。
賃借人(テナント)も同じように契約期間に最大のパフォーマンスを出す必要がある。
だから売上歩合の無い「歯医者さん」だってしっかり宣伝してあげないといけないのです。
患者(顧客)が増えれば契約を継続したいと思うし、患者(顧客)が増えなければ安い賃料の路面に移転するかもしれません。
これが定期借家契約に仕込まれたプログラムなのです。
普通借家契約と定期借家契約の違い。
そこに仕組まれたプログラム。
それを前提にSC経営は考えなくてはならないのです。
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