「ECの進展で実店舗の役割は終わる」という論調は多い。
「もうリアル店舗は不要だ」と言う声もある。
でも、これは正確ではない。
正確には、
「ECの進展により、これまでの店舗の役割が変る」
ということだろう。
これまで「販売機能」として存在していた実店舗は、今後、
1.ショールーム
2.ブランドの世界観を伝えるパビリオン
3.商品を確かめる場所(見て触って試して同伴者など第3者の意見を聞く場所)
4.ECの受け渡し場所
5.広告宣伝機能(店舗の存在やファサードのサインや屋外広告との連動など)
6.顧客との接触チャネル(知らない店を見つけてフラッと入ることも多い)
7.時間消費(時間つぶし)
8.店員さんとの価値観の共有(これはコミュニケーションであって接客では無い)
9.テストマーケティング、サンプリング
10.顧客情報の獲得
こういった機能と役割に変わる。
だから、ますます、商品を見て確かめて新しい情報を伝えてブランド価値を上げるためにはしっかりした店作りをしないといけなくなる。
店舗の「出店場所、内装デザイン、VMD、空間環境、店内動線、音、匂い、スタッフ」すべてに気を使わなければならない。
この考え方を一番実践しているのは、「apple store」だろう。
※ホームページから拝借しました。(出所)https://www.apple.com/jp/retail/kyoto/
ブランド価値を高め、新商品の優位性を伝え、接触チャネルとして有効に機能する。
だから、一等地立地だし、大型だし、カッコいいし、楽しい。
情報は、今やスマホで検索すれば他者の評価も含めて瞬時に手に入る時代。
「お店に行くこと(いること)が楽しい」
そして
「お店に行く必然性」
この2つが絶対に重要なのだ。
昔は、全国津々浦々まで実店舗を出店し、商品を供給し、顧客へ届けていた。
これは事業者自らが、お客様に近づくことで販売数を伸ばすビジネスモデルだったからだ。
しかし、今は、ネットからの物流で商品は届けることが出来る。
だからと言って、販売機能としての店舗が0になることはないだろう。
買い物に出かけることは楽しいイベントには変わりない。
でも、残念ながら店舗数はこれまでのような数は必要が無くなるし、在庫を持つことも無いから面積は縮小する。
そして、出店場所は、一等立地に集約されていってしまう。
一等立地はますます賃料が高騰し、そうでない場所は賃料の低下に留まらず、空き区画がどんどん増えていく。
それが今の状態なのだ。
では、今あるショッピングセンターや商業施設はどうするのか。
方法はいくつかある。
まずは、「商品の受け渡し場所にしたい」というメーカーの希望を断るようなことはショッピングセンターはすべきではないだろう。
なぜなら、実店舗(リアル店舗)は人が来てくれないと始まらないからだ。
大切な時間を使って来てもらうことの重要性、大切さ。
これを再認識することがまずはスタートだろう。
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