SCアンドパートナーズ

Vol.347 「定期借家契約の功罪とは」

今日は、これまで避けてきた定期借家契約制度について書きたい。(※長文です。気を付けて)

なぜ、避けてきたかと言うと、この定期借家契約、どう考えても貸主に有利だからだ。

(むろん、それはあくまで過去の普通借家契約に比べてのことだが。)

普通借家契約制度は、借主保護の観点から借主(テナント)が絶対的に優位な仕組みだった。

これは、日本の過去の歴史や先の大戦による戦後処理の一つでもあったし、借主(借家人)は貸主(不動産屋)に比べて圧倒的に情報格差があったことから借主(不動産の素人)を保護することに必然があったからだ。

(このテーマは長くなるので聞きたい人は個別研修で対応します)

しかし、社会が成熟し、建物賃貸借契約が事業用に多用され、あくまでプロ対プロによる契約行為は、欧米のように契約主義に転換することが必要となった。

そこで登場したのは定期借家契約制度である。

現在、SC事業では、建物賃貸借契約の形態は、この「定期建物賃貸借契約」が一般的だ。

定期借家制度は、1990年11月、「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」が成立し、借地借家法の一部改正によって創設、2000年3月に施行された。

従来の賃貸借契約(普通借家)では、正当事由(貸主の自己使用など)が存在しない限り、貸主からの更新拒絶は認められず、自動的に契約が更新する(法定更新)のに対し、定期借家契約は、契約で定めた期間の満了により更新されず確定的に賃貸借契約が終了する画期的な制度となった。

ただ、普通借家制度が無くなった訳ではなく、定期借家制度と併存している。

この定期借家制度の最大の特徴は、「契約満了によって確定的に契約が終了する」ことだ。

ただ、普通借家制度から定期借家制度への転換は、いろいろな副作用もあるだろうと、法律によって事前説明、契約書の書面化、終了通知など一定の行動規定を定めることになった。

この定められた行動規定を一つでも欠けてしまうと定期借家契約として成立しない厳しい規定であるところを見ると法律家たちはかなりナーバスにこの定期借家制度を導入したのだろう。

とはいえ、この定期借家制度は2000年に登場してから早20年。

すでに会社に入ってから普通借契約を見たこともなく、定期借借家契約しか扱ったことの無い人の方が増えた。

ある意味、恐ろしいというか、時代を感じる事態ではある。

では、この定期借契約の功罪を見ていこう。

この功罪を見るには、貸主(デベロッパー、不動産屋)、借主(借家人、テナント)の両方から見ることになる。

■貸主側(SC)のメリット
1.契約は期間満了と共に確実に契約が終了する。
2.一定期間賃貸借契約が担保出来る(場合によっては期間内解約に対して違約金を設定できる。)
3.賃料増減額請求権を排除できる。
4.計画的にリニューアル投資が実施できる。

■貸主側のデメリット
1.契約のまき直し業務(再契約業務)が増加。(定期借家契約は必ず契約を締結しなおさないといけない)
(これくらいしか思い当たりません。)

■借主(テナント)側のメリット
1.契約期間中、貸主から解約されることが無い(もちろん、解約を協議されることはあるが)
2.SCによっては契約期間中でも(特約で)6か月前予告の退店が認められる。

■借主側のデメリット
1.定められた期間で納得するしないに関わらず、必ず契約は終了する。

ということで、契約期間が確定的に終了することは貸主(SC)側に大きなメリットがある。

それまでフロア改装を行おうとしたとき、そのフロアに30店舗があれば30店舗の合意が必要だった。

仮に1店舗でも合意されないとフロア全体のリニューアルできず、陳腐化したままSCを運営しなければならなかった。

しかし、その30店舗の定期借家契約の終了時期を統一しておけば、確実にリニューアル投資を実施できる。

リニューアルだけでなく、施設が老朽化し、顧客の安全のために抜本的に設備改修が必要になっても普通借家契約時代は、一店舗でも反対すれば、長らく説得し、場合によって裁判まで行い、和解に莫大な保証金を支払うことを余儀なくなれた。

それが今や、ビジネスライクに進めることが出来るようになった。

これは施設運営にとっては画期的な変化となった。

しかし、借主側(テナント側)には大きく不満も残る。

まず、貸す側(SC側)は、「SCの鮮度を保つ」として適宜リニューアルを実施したいがためにテナントの契約を2年、3年と短く締結したい。

しかし、前回も書いたがテナントは内装投資をするので、その償却と資金回収に必要な期間があり、その回収が終わってから利益が出始めるところを契約終了と共に泣く泣く退店を余儀なくされる。

これは一概に貸す側だけが悪いわけではなく、あくまで契約は、「契約自由の原則」が基本

お互いの合意であるわけだから、借りる側もいろいろな事情があると思うが合意の上、契約を交わしたのだからそれは残念ながら「自己責任の範囲」となる

一番、テナントが納得いかないのは、売上も好調で顧客づくりも出来て順調に経営されているはずが、SCの館長が交代すると、その新しい館長の好き嫌いで退店を判断されることだと言う。

その館長の古くからの付き合いのあるテナントを入れることになり、退店させられるなど理不尽さを感じながらの退店も多いと聞く。

そして、最近、特に問題になっているのは、FC(フランチャイズ)だ。

脱サラしてフランチャイズでSCに出ても、定期借家契約で契約が終わると退店となれば路頭に迷うこととなる。

だから、今はFCではSCに出店しにくいと聞く。

この問題は地方SCではかなり深刻な問題だ。

そして、定期借家契約による一番の問題と私が感じているのは、テナントの「商品づくりの短期化」だ。

テナントは、決められた契約期間で結果を出さないと契約終了と共に退店を迫られることになるため、いきおい、売れ筋商品だけを売ることになる。

すると何が起こるか。

SC中に同じような商品が並ぶことになるのだ。

今、どこのお店に置いてある商品は区別がつかないほど酷似している。

店舗間の個性が無くなるのである。

同質化と没個性

だから、SCがつまらなくなる。

じっくり顧客づくりを行うことより、とにかく短期的に売上を作ること。

これが優先される。

この問題が結局、SCをどんどんつまらないものにしていると感じている。

不思議なものである。

SCにとって朗報となった定期借家契約がSCをつまらないものにしている。皮肉と言えば皮肉だ。

では、また、普通借家契約時代に戻るか?

それは無いだろう。

何故なら、普通借家契約はあまりに借主(テナント)に有利すぎて、健全な経済活動が阻害されるからだ。

リニューアルをするのに、長い交渉期間と莫大な保証金を支払うようでは諸外国のスピードに着いていけるわけはない。

今、日本は諸外国に比べて多くのことで後塵を拝している。

これは既得権益を守ることや新しいことを始めるためには高ハードルを越えなければならないことが多いからだ。

定期借家契約が出来て20年。

そろそろビジネスの仕組みも変えなければならないし、テナントもしっかり自分の必要な契約期間を主張し、それを獲得すべきだろう。

SCが、テナントリーシングに苦労している今こそ、テナントの皆は、ビジネスライクに交渉できるいいタイミングではないだろうか。

SC側もこれまで立地優位性を盾にテナントに短い契約期間を迫ってきたが、これからは人口減少時代だ。

これまでのような新規性や回転だけで利益を得るのではなく、数少ないお客様に頻度良く足しげく通ってもらうことを真剣に考える時代になったことに早く切り替えるべきだろう。

日本一号店、新業態、関西初、九州初などの新規性も重要であることも分からないでもない。

でも、お互いが納得しウィンウィンにならないとビジネスが継続しないのも事実だ。

まず、SCデベロッパーが施設の将来的なビジョンをしっかりと持ち、インターバルを決めたリニューアル計画を示すことから始めて欲しい。

これが私の想いである。

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nishiyama@scandpartners.jp

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株式会社 SC&パートナーズ

代表取締役西山貴仁

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。

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