新年がスタートし、どこもセール真っ最中。
ちょっと、セールの思い出を。
今から20年前、旧グランベリーモールを開発した際、アウトレットモールを包含した。
当時は、まだ、アウトレットモールも黎明期で数も少なく、運営管理の事例もセオリーもほとんど無い時代だった。
ただ、一つ思っていたのは、「アウトレットは業態ではなくシステムだ」ということだった。
アウトレットはシステム?
アウトレットストアは、もともと製造過程で出てきた傷物やサンプル品など市場に出せないものをメーカーの工場に併設される形で販売したり、季節外品、キャリー品、返品、在庫などの処理のためにプロパー店と切り離して造られた。
これがアウトレットストアである。
そして、ここに目を付けたアメリカのデベロッパーが、アウトレットストアを集積して作ったショッピングセンターがアウトレットセンターである。
要するにアウトレットとは、プロパー店の販売過程や工場の生産過程において発生する、B級品、季外品、傷物、サンプル品、キャリー品などを販売(処分)するための機能であり、小売り流通を営むために必要なはけ口(アウトレット)であり、言わば流通システムの一部を担うものなのである。
また、プロパー店で動きの悪い商品を店頭で値引くとブランドイメージにも影響することからセール時期まで待たずにアウトレットストアへ商品を移し、そこで値引き販売する。
だから、アウトレットストアには、季節とか、サイズとか、色とか、トレンドとか、そういうものとは切り離された商品が並ぶことが本来の姿なのである。
当時は、売れ残った赤いパンツだけが大量に並んでいたり、冬物が夏に売られていたり、それが本来のアウトレットストアだった。
アウトレットとは、流通の最終段階を担う流通システムの一部
こんな理解を1990年代はしていたので、アウトレットモールでセールを行うなどおかしな話だ、と考えていた。
しかし、現実はそうはいかなった。
と、ここからタイトルの「セールの思い出」になる。
4月に開業し、6月くらいになると店舗の店長さんたちから「いつからセールをやるんだ?」と半ば突き上げに近い形で迫れたのだ。
こちらは「アウトレットでセールってそもそもおかしくないですか?普段から安く販売してますよね?」なんて正論を言っても聞いてもらえず。
皆、アウトレット店の店長になる前は、プロパー店の店長や店員さんだったわけで7月、1月にはお祭りのようなセールを長年経験しているから、この時期は浮足立ってしまうらしいのだ。
そして、他の商業施設のセールの情報が入ってくると、居ても立ってもいられなくなるらしく、「うちはセールやらないのか」と質問が矢のように飛んでくる。
この集団心理の雰囲気は、ここでは表現できないような何とも不思議なものだった。
そして、追い打ちをかけたのがお客様からの「セールはいつからですか?」の問い合わせの数々。
そんなこんなで渋々セールを企画実施した。
当然、告知も遅れ、本部への周知も出来ず、館内装飾も中途半端、見事に失敗するわけだが、ここで得た教訓は大きかった。
その教訓を生かし、次のセールからはあらゆる準備を行い用意周到行い、まんまと成功した。
ただ、アウトレットでセールをやることにはどうしても納得できなかったので、実施時期はプロパーのセールとは一線を画し、かなり遅い時期にした。
これも功を奏した。
7月にプロパー店で行ったセールで在庫になったものをアウトレット店に集めて夏休みに売る。
旧グランベリーモールは、プロパーゾーンも併設していたので、セールが2回行われることになり、通常、落ち込むはずの2月、8月にもう一度山を作ることが出来たのである。
1月7月のプロパーセール、2月8月のアウトレットセール。
1年間に4か月間もセールやるのもどうかと思うが、一般的に小売りが落ち込む時期が山になるのだからすごいことである。
年間の売上が平準化されたのである。
今や、どこの企業のアウトレットモールでもタイトルはマチマチだがセールが当たり前のように行われている。
「普段も安いけど、もっと安い」と。
いつも言うのですが、こんな売り方をしていては、顧客の価格に対する信頼性はどんどん失われているのではないでしょうか。