2019年9月19日、国土交通省から2019年の地価調査(基準地価、7月1日現在)が発表された。
9月19日の日経では、
「三大都市圏以外の地方圏で商業地が1991年以来28年ぶりに上昇。
上昇地点の数(全用途)は全国で6802と全体の3割を超える。
ただ、けん引役は交通利便性の高い住宅地や訪日客らのホテル需要などが見込まれる商業地で、その他の場所との二極化が続く。」
と分析されている。
確かに地域によってマダラ模様のようだ。
過去、日本では、日本列島改造論、平成バブル、ファンドバブルと度々地価の上昇ステージがあった。
そして、今回の地価の上昇。
ここで感じるのは、この上昇する場所がどんどん狭まっている点だ。
日本列島改造論の時は全国的に地価の上昇が見られたが、平成バブルでは都心や中心市街地、それでも地方に波及した。
ファンドバブルの時は、地方に波及することはあったが、投資先として優位性のあるところに限られた。
今回の上昇局面は、本当に一部に集中している。
この日経新聞のグラフからも分かるように開発期待の高まるエリアに集中している。
投機目的と言うより、開発可能性に対する収益・利回り期待なのだろう。
では、この地価の上昇が商業施設、特にショッピングセンターに及ぼす影響はどうなるか。
それは「開発の減少」と「ミックスドユース型の増加」に直結する。
近年のECの進展によるリアルの売上低下、この地価の上昇と合わせて工事費の高騰も相当のもの。
国交省の資料から分かるようにここ数年、労務費単価の上昇が続く。
結果、ショッピングセンターの開発は滞っている。
「商業施設では利回りが取れない」
「ホテルの利回りに勝てない」
「商業施設は不動産価値を上げるだけのもの」
と言った声も多く、実際に商業施設開発で街の価値を上げ、マンションの分譲で回収するモデルも増えている。
これまではショッピングセンターを建設し、テナントを誘致し、その売上から一定割合を賃料として収受するSCビジネスモデルは機能してきた。
しかし、近年のアパレル不振、人口の減少、ECへの移行からテナントの出店意欲は低下し、実際に出店しても思い通りの売上が確保出来ないことも多い。
結果、投資額を回収できないため開発を断念、もしくは他の不動産用途との合わせ技で開発するところが増えた。
今、商業施設を開発しているのは、
・過去から保有している簿価の低い土地の持ち主
・商業施設を作ることでシナジー効果を生む企業
・これまで低い不動産効率だったものを上げることが出来る企業
・都市再生特区や国家戦略特区のように容積割り増しを受ける土地
・小売りを本業とする企業の本業ビジネスの補完機能
・開発から売却まで短期で回せるノウハウや仕組みを持つ企業
などだ。
でも、街づくりにおいて商業施設がないことは考えられない。
なぜなら、土日に人が居なくなる街に魅力があるだろうか。
街は、住む人、働く人、余暇を過ごす人、遊びに来る人など多様な人が集まるからこそ、成長する。
ただ、残念ながら今の地価の上昇はそれを許さない利回りをはじき出す。
これまでの生活や文化や歴史を置き去りに超高層のオフィスが林立する無味乾燥な街が出来るのだけは避けたいとこの基準地価を見て思う。