「昼寝はタダか?」
今日は、この命題に答えたい。
私の業務の1つとして、ショッピングセンターの経営や開発や運営に関する研修があるが、時々、「研修は社内でやります」という会社に出会う。
社内の実務に長けた方に講師役になってもらい社内でレクチャーするという。
これはこれで価値はある。
講師役になった人は、これまでの仕事の棚卸しや資料にまとめることで自身の知識の整理になる。
受講する方も社内の方が講師なら気軽に質問も出来る。
そして、何より、勉強するという前向きな取り組み姿勢が会社の中に浸透する。
だから、これはこれで価値がある。
暗黙知を形式知に変えていくナレッジマネジメントだ。
ただ、ここに「機会費用」という概念が抜け落ちていないだろうか。
「機会費用」とは、何かの業務を選択すると選択しなかった業務で得られるはず収益を失うことを指す。
何かを選択することによって犠牲になった収益である。
ビジネスは、常にこの選択の中にいる。
社内研修で講師役を依頼された方は、人事との打ち合わせ、調査、資料づくり、当日の講義、と相当の時間を使う。
講師役になる人ほど、優秀で会社のエンジンとして企業の収益と成長をもたらす存在である場合が多い。
そのエンジンとなるべき人材の時間を研修に使う。
何て、もったいないことなんだろう。
セミナーを受講する数万円をケチって大切な人材の時間を犠牲にする。
その講師役の失われた時間によって、どれだけ会社の損失となるのか。
社員は、外に向かって、顧客に向かって、全精力を傾けることが大切なはず。
日本の企業は、固定給だから、こういった意識が低い人が多い。
社内でやればタダだと。
でも、その一方で、失われた時間をどのように考えるのか。
もう1つ、大きな機会費用を発生させる業務がある。
それは、「マニュアル作り」だ。
これまた実務に長けた人にその業務を指示する人が絶えない。
マニュアル作りは、調査、テキスト化、図表作成など相当の時間を要する。
この間、その社員は、会社の机から動けない。
今、話題の滝川クリステルさんが登場するCMでマニュアルを作っているエンジニアに、
「あなたがやる仕事じゃないでしょ」
と一喝する場面がある。
まさにアレだ。
優秀なエンジニアは、研究開発に時間を割き、新しい価値を作るのが仕事。
エンジニアにマニュアル作りを指示するセンスが理解できない。
優秀なテナントリーシング担当者は、マニュアル作りではなく、1社でも多く、テナント企業に会うことを優先すべきだろう。
マニュアルは、どうしても作ることが目的になる。
時には年度目標になっていたりするので、まさに作ることが目的だ。
でも、マニュアルは、作ってからが本番。
毎年、情報や数値は変わるので常にアップデートが必要となる。
ところが会社の中には、何年も前に作ってから全くアップデートされていない古ぼけたマニュアルがたくさんある。
今年もそのマニュアルの一つが作られていく。
今日の主張は何か。
私に研修を発注しろ、などと言うつもりは無い。
言いたいのは、
1.会社は、優秀な社員に活躍させる時間と環境を作ってあげて欲しい。
2.研修やマニュアル作りなどは外部化して本業を成長させて欲しい。
3.機会費用を理解して欲しい。
この3つだ。
昼寝はタダか?
答えは「否」
タダでは無い。
お休みの日、疲れてるとは思うが、昼寝をせずに本を一冊でも読めば、その時間は機会費用にならずに済む。
機会費用をいかに低減させるか。
これが日本の生産性を上げる第一歩。
会議の機会費用も考えたい。