ショッピングセンターの企画書やリリースを見ると「キャッチコピー」と「コンセプト」が混同されることが多い。
「コンセプトは、○○○○!」
これはあくまでキャッチコピーであり、キャッチフレーズだ。
コンセプトとは、「誰に」「何を」「どうやって」提供するのか。
これを決めること。
要するに自分がどうありたいかだ。
「誰に」「何を」「どうやって」提供するのか。
でも、これを長々と説明されてもなかなかピンとこないし、理解するのも時間がかかる。
だからキャッチコピーをコンセプトと表現することにもなる。
長い文章も記号化(ワーディングなど)することで媒体に載せやすくなるし、人々の気をひくことが出来る。
忙しい今の時代、ワンワードでコンセプトを理解させたいもの。
だから「コンセプトは○○○○!」という表現が悪いわけではないし、否定するつもりもない。
でも、コンセプトとは、すべての商品、製品、サービスの根底に流れるものだし、それを具現化することで商品や製品やサービスができあがるもの。
コンセプトありき。
そんなことを思っていたら、ニトリの新聞広告を目にした。
(新聞を写真に撮ったのであまり綺麗で無くごめんなさい
完成された商品と広告だと感心した。
まずデザイン。
シンプルでカジュアル。
万人受けするだろう。
天板も広めで使いやすそう。
そんなことを感じながら見たキャッチコピーは、
「丸みのある、やさしいカタチ。ひろびろデザインでくつろぎを。」
もうすでにこのキャッチコピーに
「何を」=くつろぎを
「どうやって」=丸みのある優しいカタチと広々デザインで
の2つが書き込まれている。
最近、コンセプトです!と言いながら横文字の意味不明なキャッチコピーを書かれることが多い中、このキャッチコピーは完成度が高い。
そして、下に目を移すと、もう一つのサブキャッチ。
「天板も座面もひろびろ。お部屋が広く感じるロータイプデザイン」
と来た。
ここでは、「商品の特徴」と「機能性」をメッセージに載せている。
天板と座面の広さ。
そして、部屋を広く感じさせるために高さを65cmにしたという。
高さを抑えて部屋を広く見せる。
これを見て、「なるほどー」、と納得する。
そして、残りの「誰に」
それがキャッチコピーの下に書いてある。
「家族や友人が集まる空間をもっと快適にしませんか」
そう、「誰に」は、「家族と友人」だ。
あくまでかしこまった来客でもなければ、1人でもない。
家族と友人。
ここで「快適な空間」=何を
が表現されている。
まとめると
「誰に」=家族と友人
「何を」=快適に。部屋を広く。ゆったりと。くつろぐ。
「どうやって」=低い仕上がり。ゆったりとした天板と座面で。
商品は、コンセプトを具現化するもの。
ただ、今回、この商品開発において、ニトリ社内でコンセプトメイクと製品開発のプロセスがどうあったのか、実際は分からない。
ひょっとしたら商品ありきで広告代理店のクリエイターが考えた広告かもしれない。
でも、この写真を見るとキャッチからコンセプトまですっきりと腹に落ちる。
そして、価格は79,900円
マーケティング4Pで言えばPRICE、4Cで言えばCOST
これを高いと感じるか安いと感じるか、人それぞれだが、マーケティングの教科書のような完成された広告だ。
決して、私はニトリの回し者でもフィーをもらっているわけでは無い。
あくまで「キャッチコピー」と「コンセプト」と「商品」が明確に整理されている好事例を伝えたかっただけだ。
ショッピングセンターの新規開発やリニューアルの時、A3のppt用紙に大きな字で、
「コンセプトは○○○○」
と書かれた企画書を見るにつけ、(これはコンセプトじゃ無いなんだよな。。。)と思うことが多い。
あくまでコンセプトは、「誰に」「何を」「どうやって」提供するのか。
キャッチコピーを造ることがコンセプトではない。
ここを理解しないとチームの皆がバラバラの方向を向くことになる。