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Vol.161 改正民法改正が及ぼす影響⑧(原状回復)

シリーズ「改正民法がショッピングセンターの運営や契約に及ぼす影響」の第8回目は、「賃借人の原状回復義務と通常損耗」です。

この原状回復、どこまで原状回復すればいいのか、いくらかかるのか、とショッピングセンターの運営ではいつも議論の対象ですが、今回の改正では次のようになりました。
ただ、このテーマは、かなり難しく、高裁によって異なった判決も出ているナーバスなテーマですので、この場では一般的な解説に留めます。
不明な点は顧問弁護士に相談してください。

改正前と改正後は次の通りです。

(改正前)
(借主による収去)第598条
借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去することができる

(改正後)
第621条(賃借人の原状回復義務)
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

第599条(借主による収去等)
借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。

第622条(使用貸借の規定の準用) 
第597条第1項、第599条第1項及び第2項並びに第600条の規定は、賃貸借について準用する。

現行法では、「収去することが出来る」としていたものを改正後は「義務を負う」と明文化されました。
また、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。」といわゆる通常損耗は明確な特約が無い場合は賃借人は原則、原状回復義務は負わないと明記されました。

この通常損耗とは、賃貸目的にそって通常に使用して起こる経年劣化のことです。
例えば、賃貸住宅に住み、通常に生活をした上で起こる畳の擦り切れや壁のくすみなど目的を逸脱しない範囲の損耗を通常損耗として、この劣化のリスクは事前に賃料の中に含まれているという考え方です。

この通常損耗について、ショッピングセンターに照らした時、どの範囲かというところが問題になりますので、工事区分表、管理区分表、資産区分表、白図などを契約書に添付し、予め原状回復範囲を明確にしておくことが必要です。
トラブルが想定されるのは、予めA工事で床、壁、天井、空調などの工事がなされている区画を店舗として使用した場合の通常損耗です。
この場合も明確に原状回復範囲を決めて明確に合意しておく必要があります。
特に「居ぬき」の場合はなおさらですね。

改正民法599条では付属物の撤去義務も明文化されましたが、過分な分離費用が発生する場合は対象外となってしまう可能性もありますので、しっかりと特約を定めておく必要もあるでしょう。

この原状回復と通常損耗の考え方は、住居系用途と事業系用途で異なります。
また、それぞれの事案によって判例も異なり、かなり個別性が高いテーマです。

事業用の賃貸借物件であるショッピングセンターにおける配慮が必要になってきますので、ご留意ください。

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株式会社 SC&パートナーズ

代表取締役西山貴仁

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。

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