SCアンドパートナーズ

Vol.159 自然を取り込む設計発想とは

5月初旬、この季節が一年を通じて一番美しい季節だと感じます。
いや、秋の紅葉の方がいいよ、という意見もあると思いますが、私は、この季節が一番いい。
何故なら多くの花が咲くからです。

特に木に咲く花に感動します。
1年間ずっと待ち続けて咲く、その真摯な姿に心を打たれるからかもしれません。

一番好きなのはモッコウバラ。
鮮やかな黄色が思いっきり春を演出するように感じるし、好き勝手に咲いているような自由奔放さも感じます。

そしてこの時期は何と言ってもハナミズキ。
紅白で並ぶとそれはそれは綺麗なもの。
そしてツツジ。
しっかりと春を告げるオオムラサキツツジ。

この木に咲く花たちはどうやって咲く順番を守るのでしょう。

3月下旬にソメイヨシノが咲き、ソメイヨシノが散ると八重桜。
その次がユキヤナギにモッコウバラにハナミズキにコデマリ、そしてツツジ。
決して順番を変えたりしない。
ずっと昔からこの順番。

すごいことです。

で、何を言いたいかと言うと、この自然に逆らって作るショッピングセンターや商業施設はうまくいかないということです。

RCやS造でしっかり箱を作って外界とシャットアウトした建物を作る。
街に忽然と現れる大きな箱。
そんな商業施設多くありませんか?

そういった建物を作る商業者の多くは、建物に入ってきた人だけ顧客と認識しているのでは?と感じます。
店頭で朝、立哨している人はお客様をお迎えするけど、そこに入ってくる方をお客様と認識する。
そういった建物の構造や経営思想で商売はうまくいかないと思うのです。

熱効率を考えたら外界とシャットアウトした方がいいし、「顧客の囲い込み」なんて発想してたら自然などお構いなしに建物に引っ張り込んだ方がいい。
でも、街を歩いている人も大切なお客様じゃないでしょうか。

2000年代の初頭、アメリカにライフスタイルセンターブームが起こりました。
このライフスタイルセンターはまさにオープンモール。
自然と共にある。

ショッピングセンターは、これまで、2核1モールやサーキットモールのような強制的に顧客を歩行させる造りがセオリーでした。
この動線計画は、顧客がストレス無く歩くことには長けている。
だから間違いでは無い。

でも、これからの高齢化、そしてリアルに求められるのは強制的に歩かされることではなく、「滞在性」です。
「居場所」と言ってもいい。

ここから生み出される設計発想は、日本特有の四季と一体となって、四季を感じて、四季に逆らうことなく、抗うことなく、四季を取り込むこと。
でも、まだ、箱形を作り続けている商業施設はたくさんあります。
暑さ寒さをやわらげ、四季と向き合っていく商業施設、そんな設計発想を持つことが大切ではないでしょうか。

そんなことをモッコウバラ達から教えられているような気がします。

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株式会社 SC&パートナーズ

代表取締役西山貴仁

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒。

Facebook:西山貴仁 -SC & パートナーズ-