SCアンドパートナーズ

Vol.152 改正民法が及ぼす影響④(個人保証の捕捉)

Vol.148で解説した個人保証の極度額設定について、
「テナントオーナーが保証人になる場合、十分、財務状態も分かっているので、極度額の設定は不要と聞いたのですが」
とお問い合わせをいただきました。

ショッピングセンターでは、自営業に近い個人企業の方に出店いただく場合、そのオーナーの個人保証を求める場合が多いですよね。

その際、自分の会社だから経営状態を十分に把握しているから保証に限度を設けるのも今一つすっきりしませんが、今の時代、その社長さんがずっと社長さんで居続ける保証もありませんし、M&A、売却などの可能性もあります。

だから「社長だから」と言うことで特別扱いはしない方が良いと考えます。

今回の改正では、個人の保証人には例外なく適用されるルールと理解されていますので、当該会社の社長であっても当然極度額を設定しなければならないと解釈する方が自然のようです。

ここで気になるのは「債務者からの保証人に対する情報提供義務(改正民法第465条の10)」です。

自分の会社の保証人にその会社の社長さんが保証人になるということは、自分で自分に情報提供ということになってしまって変な感じですが、「自分が経営する会社の経営状況等は当然知っているからと会社から情報提供がなされなかったので保証契約を取り消す」となってもおかしな話です。

したがって改正民法下での判例が確立していない現段階では、施行当初は、画一的な取扱いですが、当該会社の社長だったとしても情報提供義務の履行の確認自体はとっておく方が良いという見解が多数のようです。
恐らく、今後、改正民法に対応した契約書の作成の際、保証人の条項に債務者の情報提供義務について書き込まれることになるのではないでしょうか。

ちょっと話は変わりますが、今回、極度額が明示されることになったことで、保証人になる方が減るのではないか、とも言われています。
その理由は、これまで日本では保証人というと身元保証人のような印象を持っていましたが、来年からはキッチリ金額が記載されますので、その金額を見た一般の個人は「え?そんな巨額の保証?」と印鑑を押すことに躊躇するのではないか、考えられるからです。

とはいえ、今回の改正民法では突然巨額な請求が個人に向けられないような仕組みを導入した訳ですから良いことだと思います。
保証人ではなく「連帯保証人」

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株式会社 SC&パートナーズ

代表取締役西山貴仁

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒。

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