SCアンドパートナーズ

Vol.99 やばいよ!SC

洋服が売れなくなった理由は無数にある。
ECへの移行、人口の減少、高齢化、所有欲の減退、単価の下落、気候の温暖化、同質化、消費欲の減退、所得の減少、数え上げたらキリがないほど。
そもそも1.3億人しかいない日本に年間26億点もが供給されていると聞く。
土台無理な話。
でも、その中でも私が一番注目しているのは、「人口ピラミッド」(人口構造)だ。
このことは、事あるごとに発信している。
それほど重要視しなければならないと思っている。

下図は、2000年と2020年の日本の人口ピラミッドを並べたもの。
左の2000年当時、団塊の世代と団塊ジュニア世代の2つの大きなボリューム層が存在した。
団塊の世代とは、1947年~1949年の第一次ベビーブーム時代生まれた806万人。
団塊ジュニア世代とは、1971年~1974年の間に生まれた第二次ベビーブーマー達。
この4年間は毎年200万人を超える人が生まれている。

下図に2000年をSC全盛期と記載しているのは私が勝手に定義している。
それは、渋谷マークシティ、グランベリーモール(建て替え中)、御殿場プレミアムアウトレット、イクスピアリ、アクアシティお台場、ラフェット多摩(現アウトレットパーク南大沢)、イオンモール岡崎など、名だたるSCはこの2000年の1年間に開業しているからだ。
SC元年と呼ばれることもあった年でもある。

なぜ、これほどまでに2000年のわずか1年にSCが開発されたのか。
この時期、大店法(大規模小売店舗法)から大店立地法(大規模小売店舗立地法)に切り替わることもあり、今後どういう規制になるか分からない大店立地法になる前に大店法化での駆け込み申請が背景にあったことも大きい。
それでも勝算が無ければ各社は大きな投資が出来るわけではなく、団塊世代と団塊ジュニア世代の大きなマーケットが存在したからこそ可能性を感じてのことだったのだ。
だから、当時は、今に比べて売上の予測も立てやすかった時代だった。
ところが年を追うごとにこの状況は徐々に変化する。
2010年に団塊世代のリタイアが始まり、団塊ジュニアは39歳となってしまう。
それは2000年当時、多くのSCは、ターゲットを「団塊ジュニアファミリー」や「平成ニューファミリー」と謳い、開発したものが徐々にほころびを見せてくる。
そのためアパレル各社はライフスタイルストアとか、ライススタイルショップとか、あれこれ言いながら雑貨やカフェを導入したり高齢化する団塊ジュニアを追い続けていく。
しかし、来年の2020年の人口ピラミッド(上図の右)を見ればそんなことも言っていられないことが分かる。
団塊世代はさすがに縮小する。
そして団塊ジュニアは何と50歳に手が届く。
今、多くのSCで売っている洋服が売れないのはこのせいなのだ。

ここで注目すべきは、第1次、第2次と続いたベビーブームに第3次ベビーブームが起こらず、団塊ジュニアジュニア世代が形成されなかったことだ。
要するに消費の中心となる20代、30代、40代が大幅に減少する。
でも、これも急に減少したわけでは無く、2000年から20年かけて徐々にこのマーケットは失われていく。
この変化に対応できない老舗アパレルメーカーが次々に倒れていったのはこのためなのだ。

今、ちまたではオリンピックを前に不動産市場やホテル業界は活況だが、SC・商業施設はこの現実を真正面から受け止める必要が生じる。
2020年は、商業施設にとって大きな転換点となる年なのだ。

これがあと10年経った2030年の人口ピラミッドが下図。
もう、団塊ジュニア世代は60歳に手が届く。
そして、20代30代40代は大きく減少する。

では、SCはどうするのか。
いきなり、シニアターゲットのSCを作るのか?
私はそうは思っていない。
当然、日本人口の半数が50歳以上になる日本では、ターゲットの平均年齢を上げざるを得ない。
アパレルも近年ではファッション性より、機能性重視、アクティブ重視に変化している。
これもターゲットの平均年齢が上がってきた証拠だ。

要は、この人口ピラミッドの形を前提に全てのことを考えていく必要が生じるのだ。
このピラミッドの人たちが生活をする上で何が必要なのか?何を求めているのか?
これに尽きる。
新業態、初出店、トレンド、売上、坪効率、そんなことを追い掛けて作るテナントリストは、一旦忘れて、この人口ピラミッドと真摯に向き合うことがSCには今求められている。

実はこの人口ピラミッドはもっと重要なことを含んでいる。
それは日本の社会保障そのもの。
年金、健康保険、介護、医療、住宅、税収、すべてに影響する。
これまで日本は、1千兆円もの負債を抱えてまで道路や空港などの大型投資を繰り返した結果が、今の少子高齢化と地方の過疎化だ。
戦後70年、日本国のグランドデザインは失敗してしまったのだろうか。
その責任はもちろん私たち国民にあるのだが。

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株式会社 SC&パートナーズ

代表取締役西山貴仁

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。

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