月に1~2回のペースで公開セミナーを開催していますが、最近、改めて自分の開催しているセミナーの位置づけについて考えました。
公開セミナーで扱うテーマは、ショッピングセンターや商業施設の経営、プロジェクト開発、現地の運営管理の事業領域に限られニッチと言えばニッチ。
その中でも、今、求められるものを選別して行っています。
例えば、テナントリーシングセミナー。
これはSC事業者がテナントを誘致する際の業務フローやそれぞれの手法や考え方。
SCリニューアルセミナーであれば、そもそもリニューアルとは何か?に始まり、全国で行われている事例を題材にカテゴリー分けを行い、受講者の課題を整理していくことを狙います。
SC事業収支計画策定演習セミナーであれば、商業用途の不動産の貸方基準に始まり、賃料決定理論、収入費用計画、収支表、そしてDCF、NPV,IRRの構造を解説。
テナント営業分析とコミュニケーションセミナーであれば、実際の損益計算書や損益分岐点分析手法を学び、テナントコミュニケーションにおける質問法を実際に実行できるまでを解説します。
と、実は、それぞれが扱う領域が異なるのが分かりますか。
恐らく、私のセミナーに参加された方はお気づきのことと思いますが、非常にベーシックなことを順序立てて構成化することで普段の業務と照らし合わせることが出来るよう組み立てています。
これをもう少し、分かりやすく説明するために図を使って説明します。
これはビジネスにおける知識階層や構造を表しています。(西山作成)
ビジネスは、基本→基礎→実践→応用の領域に分割されます。
もちろん、明確に切り分けられるものでは無いのでイメージとして捉えてください。
このうち、基本と基礎はどう違うのか。
ネットで検索すると「基礎と基本は同じこと」という解説が多く出てきますが、私は異なるものと理解しています。
私が考える「基本」とは、ゆるがない自然科学的なもの、です。
例えば、2×2=4
2と2を掛けると4になる。これが5になったり6になったりしない。
これが基本。
基礎は、この場合は99(くく)
ににんがし、にさんがろく、にしがはち・・・
これは掛け算という基本を活用するための基礎。
これが無いと計算ができません。
「基礎」とは、基本と実践の橋渡し役というべき存在です。
そして実践は基礎力に依存します。
実践とは、実際に行動に移していくプロセスと結果のこと。
応用とは、次のアイディアを構想し大きく展開していくもの。
こんな風にざっくり4つに区分します。
もう少し、分かりやすくするために下図は「事業収支計画策定演習セミナー」のカバー範囲を矢印で示しました。
「事業収支計画策定演習」セミナーで解説するDCF、将来価値を現在価値に割引くNPVはWACCによってPVを算出します。
このPVの基本は、利子率のn乗分の1で計算され、NPVは、そのPVの累積として算出する計算であり、基礎となります。(n=年数)
この一連のプロセスを解説することで基本から基礎へと進みます。
では、なぜ、ここに実践領域が加わらないのでしょうか。
それはこのテーマの実践領域は、具体的なプロジェクトの収支計画を策定することになるからです。
時折、このセミナーを受講された方から、「次のステップの中級編や応用編のセミナーはありませんか」と聞かれることが多いのですが、残念ながらこのセミナーの実践編はこの理由から成立しないのです。
「成立しない」とは、セミナーを企画し会場を手配し募集をかけ受講票を送り入金確認し当日開催運営する一連の事業性が確保されないと言うことです。
無理やり、仮想の数値を代入してセミナーを構成することは出来ますが、それが郊外のRSCなのか、都心の商業ビルかでは全く収支構造や損益構造が異なるのでターゲットがセグメントし過ぎて公開セミナーとして成り立たなくなってしまうのです。
こういったケースの場合は、企業ごとの具体的案件を下に非公開で行うことになります。
次に、「テナント分析とコミュニケーション」と「建物賃貸借契約」です。
「テナント分析とコミュニケーション」セミナーでは、基礎から始め実践までがカバー領域になります。
これは賃料構造や損益計算という実務の基礎編からスタートし、実際にテナント面談やコミュニケーションという人間対人間の関わり合いの手法を解説していきます。
そして、それを実践した後、結果を自らの応用でどのような結論を導き出すのか、そのベクトルを解説しています。
逆に「建物賃貸借契約セミナー」では、基本中の基本である「近代社会における契約自由の原則」からスタートし、民法、強制法規としての借地借地法の内容、そして定期借家法の持つコンセプトを理解し、実際の契約書に落とし込んでいきます。
ここでの応用は、交渉や調停や訴訟の次元になるので個別性が高過ぎててセミナーには適しません。
この他にも、テナントリーシングセミナーやSCリニューアルセミナーではそれぞれ下図のようなカバー領域となります。
これまで学校で基本と基礎を学び、社会に出て実践と応用、というような考え方がありましたが、それぞれビジネスには固有の基本や基礎があります。
残念ながら商業施設事業やショッピングセンター事業では、この基本と基礎の整備が進んでいないため、各社各人が固有の進め方で実務が行われているのが実情です。
なので、私は少しでも実践に役に立つような基本と基礎を解説し、受講者の皆さんが自信を持って業務に当たれるよう全力で取り組んでいきたいと思っています。