SCアンドパートナーズ

Vol.83 SCは元旦から営業すべきか

年中無休が定着する中、商業施設の元旦営業は広く一般的になった。

ところが近年、働き方改革や人手不足の影響から元旦を休業に変更する商業施設も出て来ている。

果たして、ショッピングセンターは元旦営業をすべきか

以前、東京都町田市にあるグランベリーモール(現在は、2019年秋開業予定で建て替え中)に勤務している時、それまで休業していた元旦営業を行った。

開業当初は正月2日からの営業開始だった。

もともと、企画段階ではまだ「大店法」下だったため、月に1度の休業日を強いられていたが2000年の「大店立地法」施行から休業日の設定に自由度が出来た。

そんなことから元旦からの営業開始を考え始めた。

でも、元旦から営業して本当にお客様は来てくれるのか?

住宅立地にあって元旦営業は成立するのか?

近隣にあるたまプラーザ東急SCでは当たり前のように元旦は休業だし、併設される百貨店に至っては当時は3日からの営業スタート。

この環境で、元旦営業は可能なのか?

そんな不安を持ちながらの検討だったが、実は、その当時、絶対に上手く行く、という自信を自分は持っていた。

その自信とは何か。

それは普段、見ているお客様の顔。

非日常空間として楽しんでいるお客様達の顔を見ていて、元旦の営業が上手く行くことを確信していた。

とは言え、元旦営業を店長会で発表する時はさすがにドキドキ。

どんな反発が出るだろうか、と。

まだ、元旦営業が一般的では無い時期。

発表すると、「えー」という声は多数あったものの意外に抵抗感は少なく皆の理解を得られた。

これは必ず成功させねば、と強く心に誓った。

とにかく元旦から営業することをお客様に周知徹底しなければならない。

「グランベリーモールは元旦から営業します!」

この一言を周知するために、告知をスタートした。

普段、コンセプト重視のポスターのデザインを初日の出をイメージするコテコテのデザインに変えた。

駐車場の入り口のバーに「元旦営業します」と掲げた。(車で来た人は否応なくその掲示を見る」

トイレの便器の上に「元旦から営業します」とPOPを貼った。

店舗に協力してもらって、合計1万個の福袋を作ってもらって、チラシに掲載した。

もう、出来ることはすべて行った。

そして当日を待つ。

不安だった。

ところが、蓋を開けてみたらそんな杞憂はどこへやら。

朝からたくさんのお客様が来店し、開店前から2,000人の方が待っている。

これを見たときは、涙が止まらなかった。

お客様に感謝した瞬間だ。

一日中、客足は途絶えず、むしろ、閉店時間に閉められないのではないか、と思うほど、たくさんの人が夜まで滞在されていた。

結果、なんと、365日のうち、この元旦が一番を高い売り上げを達成した。

これには驚いた。

でも、福袋、振る舞い酒、太鼓、獅子舞、これらをお客様が楽しみながら正月気分を味わっていただいていることが分かる。

正月の元旦は家でゆっくり。

このライフスタイルが変わったことを痛切に感じた。

でも、それは悪いことではなく、お客様は、ここでゆっくり家族で過ごしている。

普段、来店されているお客様の顔とは明らかに違う。

ものすごく、顔にゆとりを感じるのだ。

「あー、やって良かった」とお客様のにこやかな顔を見て、本当に思った。

ところがミスもやってしまった。

それは駐車場の開場時間。

普段10時開店のため駐車場開場時間を通常9:30に設定しているが、それを早めることに頭が回らなかったのだ。

電車の始発で来られたお客様は、すでにお目当ての店頭に並んでいる

ところが車で来たお客様は9:30まで車を駐車場に入れられない。

さすがにこれは怒られた。

本当に申し訳ないことをしてしまった。

次の年からは反省して早く開けるオペレーションを徹底した。

そしてもう一つ。

グランベリーモールは路面店の集積体だから、福袋のお目当てのお店の前に直接並ぶ。

この待ち列がどれほど並ぶのかまったく見当つかなかったので、ここも手薄になってしまった。

これを反省して、次年度からが12月31日の営業終了後、各店頭の床にガムテープで待ち列の並び列を貼った。

すると元旦、早く来られた方はキチンとそのガムテープの表記に沿って並んでいただけた。

駐車場のミス、並び列のコントロールの不備。

さすが東急線のお客様だけあってにこやかに許してくれた。

ここでもお客様に助けていただいた。

本当に手作りだった。

振る舞い酒も出店している東急ストアのマネージャーにお願いして樽を買い、自分たちで運び、その振る舞い酒も出店テナントのジェラート店のスタッフに手伝ってもらい、お正月太鼓も以前から知り合いだった「都筑太鼓」の大将に頼んで叩いてもらった。

お客様は大変喜んでくれたと同時にこの手伝ってくれたテナントスタッフの人たちも心から楽しんでくれた。

次の年、都筑太鼓の大将が「獅子舞も出来るよ」というので、これも始めた。

そうしたら、これもまた大盛り上がり。

お客様は本当にここに来て、お正月の時間をゆったりを過ごしている。

出店していたアウトバックステーキハウスも元旦から予約で満席。

「えっ、元旦からステーキ??」

と思うが、家族が集まる元旦に食事をする時間を作ることが重要。

その一役を買ったのである。

グランベリーモールでは元旦営業は成功した。

ところが、同じ会社で運営しているSCで元旦営業してもあまり盛り上がらず、逆に2日の売上に影響してしまった。

ここは2年目から元旦営業を取りやめた。

もう少し、やり方があったのかもしれないが地域性やSCのコンセプトや来場されるお客様のモチベーションがなせる業だろう。

ということで話を元に戻す。

「SCは元旦営業すべきか」

このテーマは、「SCによる」とありきたりな解答で恐縮だが、この通りである。

それは「元旦を営業する」これを目的に考えるのではなく、SCの立地、日頃来ているお客様、商圏、取り扱い商品、近隣との競合環境、これらを鑑みて決めることしか無い。

でも、やってみなければ分からないことは多い。

もし、価値を感じていなければ元旦はゆっくりお休みした方がいいし、お客様のためになると思ったら元旦営業するればいい。

でも一番重要なのでは、元旦営業することを、「売り上げを取りたい」「前年を落としたくない」などを発想の起点にするのではなく、「お客様にとって」を発想の起点にして、考えることだろう。

それが成功の秘訣だと思う。

クリアランスやセールでお客様を呼ぼうなどとは考えないように。

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株式会社 SC&パートナーズ

代表取締役西山貴仁

東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員、渋谷109鹿児島など新規開発を担当。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒、1961年生まれ。

Facebook:西山貴仁 -SC & パートナーズ-