今月に入って百貨店各社は中間決算を発表している。
東京のある大手百貨店では、売上高5,639億円、営業利益109億円と発表、大阪のある大手百貨店では、139,509億円、営業利益2,485億円と発表した。
それぞれ億円単位の営業利益の大きさに驚くが、これを対営業利益率にすると両者とも1%台となる。
以前からこの百貨店の営業利益率の低さを不思議に思っていた。
利益率が小さいから売上高のほんのわずかな低下によって営業利益は瞬時に消えてしまうのではないのか、と。
百貨店の人は常に売上売上と言うものの実はこの売上高は実体の無い虚像ではないのだろうか、とも思っていた。
百貨店にはメーカーとの「消化仕入れ契約」という不可解な契約形態がある。
これは百貨店に商品を並べ、顧客に販売した時点でメーカーから仕入れを立て、売れなければ、その商品はメーカーに返すと言う。
何とも不思議な仕組みである。
どう考えても完全歩合制の不動産賃貸料に近いのは無いのかと思っていたところ、東京の大手百貨店がIFRS(国際会計基準)の適用を発表した。
✳︎ホームページより。
するとこれまでの売上高11,085億円だったものが 4,525億円になるという。
何と60%に低下する。
これはIFRSにおいて消化仕入れ契約は売上高に計上されないからだと。
消化仕入れ契約では、売れた段階で入ってくる粗利益だけが営業収益として計上されるようになる。
(売上ではなく、あくまで営業収益)
IFRSでは消化仕入れ契約は、「メーカーが百貨店に販売を委託した」行為と見なされるらしい。
これまでメーカーに営業委託とか、販売委託とか、委託契約を行っていた百貨店の立場が逆転するのだ。
メーカーが百貨店に委託する。
まさに主従逆転。
百貨店取引のうち、この消化仕入れ割合は70%と言われるからIFRSが適用されれば、百貨店の売上高(収益)は概ね70%になるのだろうか。
そうすると営業利益率は3%程度へ上昇する。
こうなると小売業としてはまずまずの利益率に落ち着く。
このIFRSの任意適用を実施した百貨店企業の英断と先進性に敬服する。
逆にいつまでも消化仕入れを売上高として扱っている企業は早々にこの売上高至上主義から抜け出して経営の近代化を図っていくことが今、求められているのではないだろうか。