連載第76回は、ショッピングセンターの販促イベントのコストは「経費」ではなく「資産」である理由
ショッピングセンター(SC)運営では、マーケティングにおけるプロモーションを販売促進活動、略して「販促」と呼ぶ。
ここについては本連載第17回〜18回で詳述しているので、そちらを参照していただきたいが、この販促費は損益計算書の費用項目に計上される。
すなわち経費であり、その存在は利益を圧迫する。
しかし、本当に経費と理解して良いものだろうか。今日はここをテーマにする。
SCで開催する3種類のイベント
今回のテーマを簡潔に説明するにはイベントが分かりやすい。SCで開催するイベントには次の3種類がある。
①集客イベント
その名の通り、集客のためのイベントである。
例えば、有名タレントによるコンサートやサイン会やトークショーの開催、先着○○名様への無料景品の配布、テレビなどマスコミを使ったプレイスメント(SCを撮影場所に使用する等)など人が来たいと思うイベントや広告を仕込み、集客を図る活動である。
このメリットは集客数(来館者数)の増加であり、テナント(店舗)の売上を上げる機会を向上させる。
デメリットは、来館する消費者がテナントの客とは限らず、集客が売上にはつながらないこともあり、むしろ売場が荒れ、常連客が離れることも少なくない点だ。
日常的に利用する顧客にとってはタレント目当てにしてきた一見の客の中では落ち着いて買い物どころではない。
私も集客のためタレントイベントを企画したことで徹夜組が出てしまい、ごみやトイレや騒音でSCに悪影響を与えてしまった経験がある。
だから、この集客イベントはその功罪をしっかり認識して行うことが大切である。
②販促イベント
一方、販促イベントは、集客では無く販売促進のために行う。
例えばガラポン、スタンプラリー、ダブルポイント、販促券(割引券)、セール、バーゲン、フェア、スクラッチなどキリがないほどメニューが存在する。
販促とは、元来、小売業者が自らの売上を上げるために行うものだが、SCではテナントサポートとして行う。
この販促イベントは非常に分かりやすくSC側の満足感も高い。
それはKPIとなる売上に直結するため、その効果が測りやすく、出店者からも喜ばれるからだ。
しかし、販促イベントの過度な実施は価格のディカウントを伴い客単価が下落する。
また、派手な告知はクールなものにはならずSCのブランドイメージは棄損する。
SCプロモーションを販促と呼んでいる限り、このイベントに傾注することは避けられないだろう。
③サービスイベント
前出の集客イベントの目的は「集客」、販促イベントの目的は「売上の増加」、これに対してサービスイベントの目的は「来場者の満足度向上」にある。
例えば、夏休みの子供向けのヨーヨーすくいやカブトムシ展や夏休みの宿題用ワークショップ、サンタクロースとの撮影会、お正月の餅つきに書初めの掲示、七夕の短冊への願い事やペットの交流会、その他、街コンや街バルなど大きな集客につながるわけでも無く、それほど売上高に直結するわけでも無い。
しかし、サービスイベントは、その積み重ねが顧客の思い出となるもので、顧客ロイヤルティの醸成を企図に行われている。
では、記憶を作るサービスイベント、この「経費」を「資産」に変換する方法は?
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