「単館SC」にスポットを当てます。
今、日本にあるショッピングセンター(SC)の総数は3133か所(出所:日本SC協会)。
これが多いのか少ないのか、それぞれの見方があると思うが、今日伝えたいのは、このSCの経営形態と成長可能性だ。
SCの多くは企業が保有し、管理し、運営し、賃料を収受する不動産賃貸業を営むが、近年、経営に寡占化が進む。
と言ってもスマホや自動車や鉄道のようにごく少数の企業が市場シェアのほとんどを占有することはないが、最近の新規SCの開発の報道を見れば一部の企業に集中しているように新たな開発は、大手資本企業に限られる。
ところが、この3,133か所のSCの中にはこういった大手資本ではなく、単館SCと言われる「1SC1企業」の経営形態も少なくない。
今日は、その単館SCにスポットライトを当てていく。
実は主流派 「単館SC」とは何か
2012年とやや古いがSC協会では次のように定義している。
「単館SCとは1つの企業が1つのSCを管理運営していること、つまり1 SCだけ開発や管理運営を行っているデベロッパー企業のことである*。」とされ、その単館SCの特徴は、「大手チェーンデベロッパーに比べると企業規模が小さいところが多く、①資金力、人的資源が不足がち、②売上低迷による賃料収入の減少、③空き区画の発生など課題を多く抱えているのが現状である。」と記載されている。
要するに単館SCとは、一つの企業が一つのSCを運営管理する個別独立したSCのことを指す。
*(一社)リリースSC協会「日本ショッピングセンター協会、初の単館SC研究会を開催」2012.9.28
では、その単館SCは全国にどれほど存在するのか。
前出のリリース(2012)からは、1企業で1SCを経営しているのは1,093社、複数(2か所以上)のSCを1企業で経営しているのは227社であり、当時のSC総数が3,090か所から割合を算出すると1,093÷3,090=35%と全SCの3分の1が単館SCとなり、その単館SCを経営する企業数は1,093社、これは全SC企業数1,320社に対して83%となり、単館SCを経営する企業が全企業数に大きく占めている(図表1,2)。
このデータは2012年とやや古いものの近年開業しているSCの多くは大手デベロッパーであり、単館SCの数は大きく異なっていないと予想される(下表内DV=デベロッパー)。
所有者別 | 企業数 | 割合 |
1SCを所有するDV企業 | 1,093 | 83.0% |
2~5SCを所有するDV企業 | 159 | 12.0% |
6~10SCを所有するDV企業 | 33 | 2.5% |
11~20SCを所有するDV企業 | 19 | 1.4% |
21~50SCを所有するDV企業 | 9 | 0.7% |
51以上SCを所有するDV企業 | 7 | 0.4% |
合計 | 1,320 | 100% |
単館SCの登場と現状
単館SCが開発された経緯は、①第3セクターなど行政主導で開発された開発物件、②メーカーなど大規模土地所有者による土地活用物件、③地方都市における大手地場企業による開発物件、④再開発による権利者主導物件、⑤企業の多角化による新規参入物件、⑥鉄道企業の資産活用物件などの背景で開発されている。近年では、大手総合スーパー(GMS)を核とした施設だったものが、そのGMSが撤退、自らでSCに転換したものなどその経営は多種多様である。
前述の通り、開発経緯が多様であり、運営管理の業務品質が高いものばかりでなく、また商圏市場以上のものを造ったことにより破綻に追い込まれたものも少なくない。また、
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