どんなビジネスでも共通する衰退の理由の1つに「ねばならない」の形成と蔓延があると常々感じている、
「ねばならない」とは、何か進めるときに「あるべき論」が先行して、時代に合わなくても、費用対効果が合わなくても、経営を圧迫しようとも、頑なに守ろうとする仕組みや形のこと。
ところが百貨店の方と話をすると、この「ねばならない」の多さに驚く。
◽︎百貨店にはラグジュアリーが無ければならない。
◽︎1階はコスメでなければならない。
◽︎食料品は地下でなければならない。
◽︎契約は賃貸借ではなく、消化仕入れでなくてはならない。
◽︎店舗には催事会場が無ければならない。
◽︎外商が無ければならない。
◽︎フロアは性別年齢別で無ければならない。
◽︎婦人服、紳士服、子供服は、別なフロアで無ければならない。
◽︎友の会が無ければならない。
などなど。
ちょっと極端な書き方をしてるので多少の疑義はご了承を。
この中で、「友の会」とは、お客様が一定額の積み立てを行うと最後にプレミアム価格を付けてお返しする制度。
月1万円づつ百貨店に預けると12ヶ月後に1万円上乗せされた13万円分の商品券となって返ってくる。
単純計算だが1万円÷12万円=8.3%の利回り商品。
お客様にとってはとてもお得な制度。
しかし、逆を返せば、この低金利時代に8.3%を百貨店は負担することになる。
そして、この運営には、「割賦販売法に定める前払い式特定取引業」として経済産業省の監督の下、手続きを求められ、預かったお金を管理し、商品券を発行管理するなど、その運営には相当なコストがかかる。
だから、もう、友の会は止めてもいいのでは無いですか?
と聞くと、「いや、友の会は必要なんです。」「友の会会員の売上が無くなるのは困るんです」と言った返事が返って来る。
これ、収支は合っているのだろうか。
売上至上主義のなせる技か。
ところが、今般、そごう・西武は、この友の会を廃業すると発表した。
ここにはどのようなプロセスや意思決定があったのか知り得ないが、百貨店の「ねばならない」の1つ。
既に友の会をカード会員の優遇に切り替えている百貨店もある。
Jフロントは早々に国際会計基準を任意適用して消化仕入れを売上高から外した。
高島屋も日本橋をSCとして開業した。
近鉄四日市では自らでシェアオフィスを導入すると言う。
今、百貨店では、「ねばならない」からの離別が進んでいる。