この世にインターネットが登場し、世界中の人が利用するようになった。
そして、4Gの登場とスマホの普及によってECが躍進を果たす。
その時、ECをリアル側からどのように捉えていたのか、順を追って整理すると次のようになるのではないと思う。
【第一段階】
入社した時、先輩から「アパレルはネットには移らないから平気だよ、と言われた」とある百貨店の方が言っていたことが印象的だ。
当時、アパレルは実物を見てフィッティングをしないと買わないものという認識があったことからこの発言があったと思う。
この時は、接客の不要なものだけが、ECに移り、リアル店舗への影響は、限定的と捉えられていた。
この時はまだ2G、3Gの時代。
【第2段階】
ところが2008年のスマホの登場と4Gの普及によってECは急速に伸びていく。
その状況を見たSC事業者は、「リアルvsネット」と対立軸として捉え、売上を奪われる脅威としてECを受け止めるようになる。
雑誌などもリアルとECの強み弱み、メリットデメリットなどを整理した記事も多く対立軸として扱うことが多かったのがこの時期である。
2012年のZOZOが始めたサービス「WEAR」にSC事業者のほとんどが驚き、反発し、抵抗したことが記憶に残っている。
【第3段階】
ところが、スマホの普及とSNSのサービスが加わり、ネットでの動くものは商品だけでなく、人と人のコミュニケーションや広告宣伝など多くのものがネットに置き換わる。
「SNSに載らない情報は情報では無い」と言われるほど、SNSの力は増し、それらを看過できなくなったリアル事業者は、O to O(Online to Offline)やクリック&モルタルと、ネットからリアルへの誘導を考え始める。
しかし、これらの取り組みは残念ながら奏功することは少なかった。
何故ならこれらの考え方は、ネットから客を取り戻したいと思う、リアル事業者からの発想であり、言ってみればリアル事業者の都合であり、エゴ。(言い過ぎか)
【第4段階】
ここまで来ると、ネットが中心となり、いよいよ無視ができなくなり、「ネットとリアルの融合」「オムニチャネル」を考え始め多くの施策を実施した。
この段階でもリアルとネットは別個のものとして捉えられていた。
リアルとネットは併存し、それを融合、リンケージさせようと言う解釈だ。
しかし、残念ながらリアルとネットは併存ではないし、共存共栄するものでは無い。
何故ならリアルはネットに取り込まれていく運命だからだ。(それを共存と呼べば共存か)
では、リアルとECを今後どうやって捉えたらいいのか。
私は、「リアル店舗はネットの一部」になると考えている。
【第5段階】
考えてみてほしい。
今、商品が生産され消費者に渡る過程で介在するSCM、SPA、EC、SNS、これら全てネットの中で動いている。
発注から生産、物流から在庫、販売からアフター、すべてがデータとしてネットの中で完結する。
ECもメルカリのようなCtoCも、DtoCも全てネットで動く。
店舗はそのネット流通の商品の受け渡し場所の役割に過ぎない。
実はこう書くと「店舗はそんなものはない!」とお叱りを受ける。
私は、店舗の存在を否定するつもりも立場を陥れようとも思っていない。
今も買い物は百貨店を愛用しているからこそ、店舗の存在を憂慮している。
店舗は流通の最終チャネルとして商品の受け渡し場所であることは紛れもない事実。
では、このネット社会において店舗の役割とは何だろうか?
ネット流通が広がり、その一機能になる店舗。
ECで家に届けてもらわず、わざわざ時間を使って行く店舗。
店舗のお客様への提供価値は何だろう?
それを考えないと本当にすべてECに置き換わってしまうことになる。
店舗で提供出来る価値。
真剣に考えないといけない段階に今、いるのではないだろうか。
果たして、未来都市に店舗は残っているのだろうか。
自動運転が当たり前になり、ウィルスとは無縁な空調が効いた大きなドームで暮らす未来都市。
そこに「いらっしゃいませ」という店舗はあるのだろうか。