2020年5月27日、日本SC協会から「2020SC白書」が発行された。
この中から特筆すべき点を報告したい。
やはり、今回、驚いたのは日本のSC総数が減少に転じたことだ。
2018年末、3,220か所だったものが、2019年に11か所減少し、3,209か所となっている。
昨年末の日本SC協会主催の記者懇談会の時は、3,219か所と発表されていたが、今回、さらに減少数の増加へと修正された。
この数値は、開業するSC数を閉鎖等SCが上回ったことを表している。
下記は開業SC数の推移だが、減少傾向が続く。
2019年、前年に比べて増加しているのは、今年開催予定だったオリパラに間に合わせるべく、多くの不動産開発が行われていたからだ。
他方、閉鎖等SCは増加し、57か所を数える。
したがって、開業数46か所 - 閉鎖等57か所 = 11か所の減となった。
この閉鎖等SCのカウントがやや混乱するので解説したい。
まず、SCをカウントする際、下記のSC協会が規定するSCの定義と取り扱い基準を用いる。
この数値基準を適用すると、2019年のSC数の動きは次のようになる。
2018年末のSC数 3,220か所
2019年開業SC数 +46か所
SC基準に該当し追加になったSC数 +18か所
2019年に閉鎖されたSC数 -45か所
SC基準から外れたSC数 -30か所
差し引き 3,209か所
要は、3,220か所 ⇒ 3,209か所 になったと言うことである。
百貨店やチェーンストアの減少が、対岸の火事では無くなったのである。
2019年の動きとして注視しなければならないのは、「閉鎖SCが45か所」と言うことだろう。
ただ、閉鎖された理由は、営業の不調によって取り壊されるものばかりではなく、マーケットの変化に対応し、建て替えや業態変更など積極的な理由も少なからず存在する。
上記は、閉鎖された商業施設の跡地利用について調査した結果だが、その半数は閉鎖後も商業施設を計画しているが、この半数と言う結果をどう見るかが重要だ。
2020SC白書では、
「長年営業を続けてきたSCが地域社会の利便性のため再生して新たな商業施設として生まれ変わる多くの事例が見られる」
と前向きな評価をしている。
しかし、逆を返せば、半数は商業施設以外を選択し、傾向を見ると商業施設以外を選択する事業者は増えている。
そして、新たに開業しているSCの面積も減少傾向にある。
これらデータは、1991年、ピークアウトした百貨店を思い出す。
そして、現在、コロナ禍の影響で外出制限、渡航制限が行われ、経済へのダメージは大きい。
直近でも多くの企業の倒産等が報道され、消費市場の低迷も続く。
しかし、今日、記載した内容は、コロナ禍前の2019年の状況である。
したがって、この傾向は悪化することはあっても復調することは難しいだろう。
この状況は、「皆で力を合わせて」「がんばろう」と言った言葉では簡単に解決しないことは皆気づいていると思う。
相当、ドラスティック、かつダイナミックな転換が行われないと2018年に草稿した「SCは斜陽産業か」にまた一歩近づいていくことになるだろう。
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2019SCデータ(西山)
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