商業施設を建設する際、特に郊外のRSC(リージョナル型)の場合、相当の駐車台数を持った大型の駐車場を必要とする。
したがって、平面駐車場だけでなく、立体駐車場を建設する。
この時、商業棟と駐車場棟とは、構造も工法も変わり、建設コストを圧縮するため各階の階高(天井高)も異なる。
したがって、下記の断面図のように完全別棟にしてそれをブリッジでつなぐ構造を取ることが多い。
このパターンは、工事費の圧縮に効果を表す。
商業施設棟と駐車場棟では、天井高も仕様も構造が異なる。
だから切り離すことで工事費は圧縮され、工事期間も短縮され、別棟にすることのメリットは大きい。
ただし、ここ大きなリスクが潜む。
それは、まず、外観だ。
駐車場棟は効率を考えるとどうしても大きな建物になる。
そうすると近隣に住む人や街には大きな影響を及ぼす。
もし、家の目の前に出来ると毎日、その大きな駐車場棟を見て暮らすことになる。
ショッピングセンターに車で行くと、まず大きな駐車場棟が目につく。
分かりやすいと言えば分かりやすいが、入庫後もダブルスパイラルという斜路でくるくる回りながら駐車場を上がり、ようやく停めても商業棟とは階高が違うのでどこに停めたのか分からなくなることもしばしば。
これが決して悪いというわけではない。
プロジェクト収支を考えれば至極当然だし、やむを得ない選択だ。
ところが、これを解決する方法がある。
それは、今回の南町田グランベリーパークなどいくつかのショッピングセンターが採用している駐車場棟を敷地のセンター(中心)に配置するケースだ。
南町田グランベリーパークの「駐車場センター配置パターン」
駐車場を敷地の中心(センター)に配置した場合の断面図(立面図)は下記のようになる。
ここに大きく3つの利点がある。
まず1つ目。
外周部から見ると視線の先には、商業用建物だけが目に入り、駐車場棟が見えない。
この先に駐車場棟があるのだが、店舗棟の陰に隠れて駐車場棟は見えない。
モールに入ると人の目には2階だけの低い(低層の)建物に見える。
したがって、空が広いのだ。
この商業棟をビレッジ風に作れば、それこそ、住宅地に溶け込むことも出来る。
そして、もう一つの利点が、完全歩車分離だ。
駐車場への入庫動線は敷地の下になるので、お客様の動線とは錯綜しない。
安全だ。
3つ目の利点は、駐車場が中心にあるので、お客様は満遍なく訪れることとなる。
これが上段の駐車場別棟型だと、駐車場側の区画とそうでない区画では、人の流動量に差が生じる。
でも、このセンター配置型には駐車場からのアプローチによって区画の差が生じない。
合理的である。
一階を店舗にすれば敷地を最大限有効に活用することが出来る。
もし、今、商業施設開発の計画をしている方がいれば検討の一つに加えてみてはどうだろう。