多様性の時代、接客ロープレに求められる意義とは
コロナ禍で中止されていた接客ロープレコンテストが再開された。
今回の連載では、この「接客ロープレコンテスト」についてご批判を覚悟でテーマにしたい。
ロープレは有効な活動
ロープレとは、ロールプレイングの略であり、研修などoff-JTの場で業務を疑似体験し新人教育や中堅社員の技術向上を目的に行われる。その代表例が、消防訓練や避難訓練だが、東日本大震災の時、前日が避難訓練だった商業施設では遅滞なく避難できたと聞く。やはり「備え有れば憂いなし」ということだろう。
その他、営業職がトークスクリプトを下に研修し成約率を向上させるロープレやSCテナントリーシング研修でも、交渉のロープレをプログラムに取り入れる。その中で接客ロープレとは、店舗の販売員の接客技術の向上のために行う研修であり、客との接客シーンを疑似体験する実践的な研修である。
一方、接客ロープレコンテストとは、客に扮した役者を相手に壇上で販売員が接客を演技し、審査員が審査・評価、順位を付けるイベントである。
SCが接客ロープレコンテストに取り組むリスク
① SCとテナントの役割と責任
改めてSCは不動産賃貸業である。多額な費用により建設したSC(賃貸人)をテナント(賃借人)に賃貸、安全な営業と集客により販売機会を提供する。テナントは、SCと協力し、売上を最大化し賃料を支払いSCの成長に寄与する。この双方の役割責任が50年も続くSCビジネスモデルの強みであり(図表1)、接客力はテナントの責任に属する。
図表1 SCとテナントのリスク負担 |
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SC |
項目 |
テナント |
不動産業 |
業種 |
小売業、飲食業他 |
– |
商品リスク |
● |
– |
在庫リスク |
● |
– |
雇用リスク |
● |
● |
不動産リスク |
– |
● |
空室リスク |
– |
② 実効性への疑問
「昨年、優勝した店舗のコンサルタントは誰ですか?」この質問に代表されるようにコンテストは優勝が目的化する。これもモチベーションの一つだが、実際、そこで一位になった店舗が売上一位かと言うとそうとも限らず、人出不足の折、シフトを回すことが手一杯で店長会すら出られない状況でコンテストへ手を挙げるテナントは限られ一部の活動となっている。
③ テナント業種の多様化
以前のSCではアパレルや服飾雑貨も多く、販売方法も「側面販売」であり同じ審査基準で対応出来た。しかし、今はテナント構成も異なり(図表2)、物販店舗でもセルフ販売や無人レジが増え、ECとBOPISなど接客の省力化を考える時代になっている。
④ SC社員の育成とキャリア
SCの運営管理に従事する社員のキャリア形成、これが最も懸念のテーマである。
接客ロープレコンテストの担当社員は、コンサルタントとの打ち合わせ、日程や場所の調整、出場者の募集、練習、大会当日の立会など相当の時間を要する。ここで対人コミュニケーション力は向上するが、この業務を数年続けた若者の得られるノウハウやスキルが今後ますますグローバル化、複雑化、高度化する社会で戦える人材となるのか、非常に不安である。あまりに閉じた世界である。
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