「大手流通企業が百貨店部門をファンドに売却」「本店が閉鎖」など百貨店にとって逆風となる話題が続くが、1991年をピークに低迷が続く百貨店の生き残り策として最も採られる手法はショッピングセンター(SC)化である。
要するに小売業から不動産賃貸業への転換である。では、この手法は将来に渡って有効なのか、今号では考えてみたい。
先日、東京・立川市にある百貨店の「SC化」の記事を読んだところ、当該店舗の売上高は81億円、社員数は140人と記載されていた。
不動産賃貸業であるSCは売上高10億円に対して1人の事務所員が必要と言われるため、この売上規模をSC経営にあてはめると10名足らずで運営される規模である。
しかし、百貨店は小売業である。
そのため、商品の買い付け、仕入れ、陳列、在庫、販売、外商など多くの業務プロセスが発生し、各々スタッフを必要とする。
付加価値の高い商品を提供し、適正な売上高と粗利益高が確保できればそのコストも吸収できるが、この30年、スーツ、家具、眼鏡などこれまで高額なものとして認識されていたカテゴリーの価格が大きく低下した。
この環境において多くの社員を必要とする百貨店は難しいビジネスだと常々感じている。
百貨店とSCの相違とは
百貨店とSCの最も異なる点は「リスクの取り方」にある。
消化仕入れなど特殊な契約形態という違いはあるものの、端的に言えば、百貨店は「自らが販売者となり顧客と向き合う」商売だ。
そして店頭に並ぶ商品の買い付けから仕入れ、陳列、在庫管理、販売員の雇用や内装投資に至るまで自らの責任として行う。場合によっては土地建物も自らで所有し、アセットリスクまでも内包する。
これに対して、SCは、商業用不動産の建設費を負担し、保有することで発生する空室リスクや地震など天災事変による棄損リスクを持つもののテナントの誘致により商品リスク、在庫リスク、雇用リスク、店舗内装リスクを外部化するビジネスである(図表1)。
百貨店はSCに比べて多くのリスクを内包化し、常に社会の環境変化による影響を多方面で受けやすい商売である
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