ショッピングセンター(SC)には、日本SC協会が定める「定義」と「取り扱い基準」がありますが、来年、「取り扱い基準」が変更になります。
【定義】
SCとは、1つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービス施設の集合体で、駐車場を備えるものをいう。
その立地、規模、構成に応じて、選択の多様性、利便性、快適性、娯楽性等を提供するなど、生活者ニーズに応えるコミュニティ施設として都市機能の一翼を担うものである。
この定義は変更にはなりません。
変更になるのは、下記の「取り扱い基準」です。
現行【取り扱い基準】
1.小売業の店舗面積は、1,500㎡ 以上であること。
2.キーテナントを除くテナントが10 店舗以上含まれていること。
3.キーテナントがある場合、その面積がショッピングセンター面積の80%程度を超えないこと。 但し、その他テナントのうち小売業の店舗面積が1,500㎡以上である場合には、この限りではない。
4.テナント会(商店会)等があり、広告宣伝、共同催事等の共同活動を行っていること。
この【取り扱い基準】は、2025年1月1日から下記の通りとなります。
新【取り扱い基準】
1.小売業の店舗面積は、1,000㎡ 以上であること。
2.テナントが10 店舗以上含まれていること。
3.最大店舗の面積がショッピングセンター面積の80%程度を超えないこと。但し、最大店舗の面積を除いた小売業の店舗面積が1,000㎡以上である場合には、この限りではない。
4.広告宣伝、共同催事等の共同活動を行っていること。
赤字が変更点ですが、近年、SC内のテナントの顔ぶれは、物販が減り、飲食・サービス店舗が増加、シェアオフィスや保険やクリニックなどこれまで想定していなかった業種の店舗も増加し、過去に制定された取り扱い基準の小売業の店舗面積の下限が合わなくなってきたということでしょう。
この取り扱い基準の変更が及ぼす影響は、開業数SCと閉鎖等SCの数字です。
上記は2023年のデータですが、この数字のカウント基準が変わります。
ということは、下記の全国SC数にも影響してきます。
日本SC協会は、「SC取扱い基準の改定に伴って新たにSCとなる施設数については、12月24日(火)に開催する「2024年度冬季定例記者懇談会」にて 発表いたします。」としていますので、この数値がどのように変化するのか。
過去に遡って修正するのか。
興味ポイントです。
過去、ICSCでも基準を変えたことによって米国内のSC数が大幅に改定されたことがありました。
今回はそれほど大きな影響は無いものと思われますが、閉鎖等SCの数は変わってくるでしょう。
むしろ、今回、私の興味を引いたのは、下記の2点です。
■キーテナント
【変更前】2.キーテナントを除くテナントが10 店舗以上含まれていること。
↓
【変更後】2.テナントが10 店舗以上含まれていること。
「キーテナント」という文言が消えました。
過去、SCには、百貨店やGMSと言った核テナントの存在が一般的でしたが、2000年あたりからこれら核テナントが無いSCが多く誕生します。
2000年開業のグランベリーモール、イクスピアリ、渋谷マークシティなどが代表例ですが、その他アウトレットモールなどはそもそもこういった核テナントはありません。
こうした現状に合わせたと言うことでしょう。
■テナント会
【変更前】4.テナント会(商店会)等があり、広告宣伝、共同催事等の共同活動を行っていること。
↓
【変更後】4.広告宣伝、共同催事等の共同活動を行っていること。
今回「テナント会(商店会)等があり、」の文言が無くなりました。
以前、SCには必ずと言っていいほど、テナント会(商店会)というテナントが共同して作る組織があり、総務委員会や販促委員会が組織され、そこがSC運営の方針を決め、執行していた形態が多くありましたが、現在は、そういった運営形態を採用するSCは減少していますので、この修正は、運営管理手法が変わったということを意味します。
この2つは、これまでのSC開発や運営管理の変化を端的に表しているように思います。
2020年4月、民法が時代に合わせた改正を行ったように色々なものが変化している時代
いつの日か、「ショッピング」という言葉も消える時が来るかもしれませんね。